モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)はこのほど、「MCPC award 2025」の表彰式を開催し、モバイルシステムの導入によりIoT・AI分野で大きな成果を上げた事例をたたえた。ユーザー部門のグランプリ・総理大臣賞には、ガンズコーポレーションの「外国人労働者の即戦力を加速する Genba DXカメラプラットフォーム」、サービス&ソリューション部門の最優秀賞は、NTTドコモビジネスの「映像分散管理プラットフォーム モビスキャ」がそれぞれ選ばれた。
MCPC award 2025表彰式の様子
MCPCは、1997年に発足。モバイルコンピューティングシステムの標準化活動をはじめ、「モバイルシステム技術検定/IoTシステム技術検定/ワイヤレスIoTプランナー検定」制度の実施や、「MCPCセミナー」開催などを通して、モバイル、IoT/AI市場の拡大を推進してきた。2003年からは「MCPC award」を開催し、先進的なモバイルシステム活用事例の表彰を通じて市場拡大を図っている。第22回となる今回はローカル5G賞を新設。合計で27件の応募があり、ユーザー部門とサービス&ソリューション部門の2部門で審査が行われた。
記念撮影する受賞者と審査委員
ユーザー部門グランプリはガンズコーポレーション
ガンズコーポレーションのGenba DXカメラプラットフォームは、主に建設業や警備、保守点検などの現場で活用されているシステム。現場作業員が装着したWi-Fi/LTE通信機能付きヘルメットカメラを通じて、映像、音声、位置情報をリアルタイムでクラウドに送信し、監督者は遠隔地で映像を確認しながら、指示・通話・記録・警告を行う。AI翻訳機能により、多言語対応で外国人作業員もサポートする。「生産性と安全性を向上させる即効性のあるソリューション」である点が評価された。Genba DXカメラプラットフォームはビジネス賞も受賞した。
ガンズコーポレーションの田仲純一郎社長は、「建設業界では人手不足や安全管理などの課題が絶えない。その解決に向けた取り組みを評価されたのは、大変励みになる。今後も技術とサービスの向上に努める」とコメントした。
ガンズコーポレーション
田仲純一郎
社長
サービス&ソリューション部門はNTTドコモビジネスが最優秀賞
NTTドコモビジネスのモビスキャは市街地映像を効率的に活用するための基盤。タクシーやバス事業者などの車両に搭載した通信機能付きドライブレコーダーで取得した映像を、モビスキャを経由して集約し、幅広い分野に応用できる。同社は特許技術の「多段AIによる工事判定」を組み合わせて「AI道路工事検知ソリューション」を展開しており、ガス導管パトロールの代替として全国のガス事業者が採用している。
NTTドコモビジネスプラットフォームサービス本部5G&IoT部/第二サービス部門の三谷秀行・担当課長は、「モビスキャには、申請中のものも含めて十数個の特許を駆使している。こういった点が、『抜きんでた独自性』として認められたのだと思う。データの提供側と、データを求める側がそろって初めて成り立つビジネスなので、今回の受賞を糧にさらに拡大していきたい」と述べた。
NTTドコモビジネス
三谷秀行
担当課長
新設のローカル5G賞は、リコーインダストリーの「工場DXの加速を実現! オールインワン・コア一体型ローカル5Gシステム HYPERNOVA」が受賞した。移動可能なサイズで、高出力かつ安定稼働を実現するシステムで、360度カメラを活用した高精細なライブ映像の配信などが可能。映像を基にした遠隔作業支援で、手組生産における品質向上、コスト、納期の改善を実現するという。
祝辞を述べた総務省総合通信基盤局の湯本博信・局長は、「モバイルテクノロジーは、昨今のAIの急速な発展に伴い、サービス品質の向上、安心・安全の確保など、さまざまな場面で重要なツールとして活用されており、生活に不可欠なものとなっている。こうしたツールを使いこなす人材も欠かせない中で、MCPCは技術検定試験などを通じて人材育成に尽力している。今後も、このような重要な役割を担っていけるよう、できる限り支援していきたい」と総括した。(南雲亮平)