オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、企業の業務基盤をAIで変革する「AIトランスフォーメーション(AX)」に向けた取り組みを加速させている。和田成史社長は、基幹業務システム「奉行シリーズ」において、オンプレミス版ユーザーのクラウド版への移行を「単なるシステムの置き換えではなく、セキュリティーとAIを両立させるための不可欠なステップ」と位置付け、一層注力する方針を示した。
(南雲亮平)
2026年度の優先事項は「セキュリティー」と「AI」だ。セキュリティー面では、近年猛威を振るうランサムウェア攻撃を中心とした脅威への対策を強化する。基幹業務データの損失は企業の存続を揺るがす重大な問題であるためだ。「奉行シリーズ」のクラウド製品は、PaaSとして利用する「Microsoft Azure」の上に構築されており、Azureを提供する米Microsoft(マイクロソフト)以外はOSやデータベースの管理権限を持たない。この設計により、外部からの攻撃でユーザーのデータが失われるリスクを最小化していることを、今年はさらに訴求していく。
和田成史 社長
AI分野は、標準機能として組み込む「AIアシスタント」と、別製品として提供する「AIエージェント」の2軸で展開する。AIエージェントについては、「新リース会計識別クラウド」と「連結会計支援クラウド」の二つをすでにリリースしている。和田社長は、提供開始から1年が経つ前者は「問い合わせ件数はトップ」と紹介。後者も注目を集めており、「AIエージェントの入り口としては良かった」との手応えを示す。
さらに同社は、AIの強みを生かして人手不足という社会課題への対応にも乗り出す。今夏にはAIエージェントの新サービスとして「タレントマネジメントクラウド(仮)」の提供を開始する予定だ。社内に分散する人事データをAIエージェントが収集・分析し、採用活動や課題の可視化・改善、モチベーション向上などを支援する。奉行シリーズをすでに利用している中堅・中規模企業を主な提供対象とし、AI時代に求められる人材の育成と適材適所の実現を目指す。
タレントマネジメント市場にはすでに多くの競合が存在し、OBCは後発となるが「奉行シリーズで培ってきた社員情報や労務情報と会計データの連携実績、蓄積したデータが強み」と和田社長は自信を示す。外部の適性検査などとも連携しながらAIエージェントがデータを分析し、社員一人一人の強みやモチベーション、組織との適合性を可視化することで、成長支援や健康経営の推進につなげていく。
同社の業績は堅調で、26年3月期は売上高が前期比9.4%増の514億円、営業利益は同8.4%増の235億円で着地した。背景には、企業のクラウドシフトの加速がある。和田社長はこの変化を「DOSからWindowsへの移行」に例え、クラウド化も同様に不可逆的に進展すると指摘する。さらに、その先にはAIエージェントの活用が広がるとみている。
この流れを踏まえ、同社は約9万システムが稼働するオンプレミスユーザーのクラウド移行を重要課題に位置付ける。また、クラウド化の進展はSIerにとっても大きな機会であると強調。標準化されたSaaSでは対応が難しい個別要件に対し、API連携やAIエージェントなどを組み合わせた最適なソリューション提供が求められるとの考えを示す。そのためには顧客ごとに対応するパートナー企業の存在が不可欠であるとして、役割分担と協力体制を強化しながらパートナービジネスを拡大していく方針だ。