日本HPは7月から9月にかけて、全国7都市でパートナー向けイベント「HP Partner Communication 2026」を開催した。9月9日の広島会場では、「AI PC」の販売戦略やローカルAIとクラウドAIを組み合わせた「ハイブリッドAI」戦略を推進する方針を紹介した。冒頭に登壇した常務執行役員の小林宗洋・パートナー営業統括兼3Dプリンティング事業部長は、「これまでパートナーの皆様とともに成長してきた。AI市場の活性化に向けても、引き続き一緒に取り組んでいきたい」と述べた。
(取材・文/南雲亮平)
小林常務は、「Windows 10」のサポート終了に伴うPCのリプレース需要が一巡し、市場全体の需要が鈍化していることに触れた一方で、AIを今後の成長のかぎに位置付けた。また、自社営業チームにSIM内蔵ノートPCを配備して生産性向上の効果を検証しているほか、ハイブリッドワーク向けのPCセキュリティー提案も強化していると説明。日本市場のニーズに対応した製品群を展開する姿勢を強調した。
日本HP
勝谷裕史 担当部長
重要戦略セッションでは、エンタープライズ営業統括ソリューション営業本部の勝谷裕史・AI/データサイエンス市場開発担当部長が、生成AIの最新動向を解説した。社内データを学習した「AIエージェント(AI社員)」が人手不足を補う将来像を示すとともに、パートナーには顧客課題を深く理解する力、課題に最適なAIや基盤を選定する目利き力、導入後も継続的に支援する伴走力が重要になると訴えた。具体的なアクションとしては、▽営業担当者自身がAIを使いこなす▽AI製品ではなくAI社員を提供するという意識へ転換する▽導入支援メニューを標準化する▽AIが人に代わって調達を担う「Agentic Commerce」に備えたデータ整備を進める─の四つを挙げた。
「HP Partner Communication 2026」広島会場
勝谷担当部長は、生成AIがモデルの性能を競う段階から業務への本格実装フェーズに移行したとの認識を示した。その上で、機密情報を扱う業務や軽量な処理にはローカル・エッジAIを、高度な推論にはクラウドAIを活用するハイブリッドAIを推進するとした。
ハイブリッドAIについては、協賛企業講演に登壇した日本マイクロソフトも注目している。同社デバイスパートナーセールスアジアの中園謙・シニアパートナーディベロップメントマネージャは、「エージェント時代を切り開くWindows」と題して、ハイブリッドAIを推進するフロンティアエコシステム戦略について説明した。AIエージェントの利用拡大に伴ってクラウド利用料(トークン消費)が増加し、企業のAI予算を圧迫している現状を踏まえ、AI PCや「Copilot+ PC」をはじめとするローカルAI処理への負荷分散がコスト最適化につながるとアピールした。
加えて同社は、Windowsアプリからローカル環境のPC上でAI機能を利用できる共通API群「Windows AI APIs」の対応範囲を、従来のNPUのみからCPUやGPUにも拡張したほか、常時稼働型エージェント「Microsoft Scout」などのエコシステム構築を進めている。これらを通じて、日本HPのハードウェアとともにハイブリッドAI環境の普及を推進する方針だ。
さらに日本HPの勝谷担当部長は、ハイブリッドAIを実践する上では、ハードウェア面でNPUやGPUだけでなく、CPUやメモリー、SSDを含めたトータルバランスが重要だと指摘した。協賛企業講演で登壇した米intel(インテル)日本法人営業本部の佐藤義和・部長も、「現在のAIは推論処理の比重が大きいが、今後は複数のAIエージェントが協調して動作するエージェンティックAIの普及によって、if文的な処理が増えていく。そうした環境ではCPUの重要性がさらに高まる」との見解を述べた。
製品面では、ローカル環境の処理能力を向上させることでクラウド負荷を軽減し、ハイブリッドAIの実現を後押しする製品として「インテル Core Ultra シリーズ3 プロセッサー」を紹介。また、価格を抑えた「インテル Core シリーズ3 プロセッサー」や、AI活用を支える管理・セキュリティー基盤「Intel vProプラットフォーム」などを展開し、幅広いニーズに対応する姿勢を示した。
展示スペースで熱心に話を聞く参加者ら
日本HPは、パートナー支援施策も重点戦略の一つに位置付ける。イベントでは、日本HPパートナー営業統括営業企画本部の小池亮一氏が、パートナー向け営業支援ポータル「HPパートナーナビ」を紹介した。開設から約10年を迎える同ポータルでは、「製品ロードマップ」や「他社製品比較表」のほか、そのまま商談で利用できる「提案ネタ広場」など、営業活動に直結するコンテンツを提供している。2023年のリニューアル以降、アクセス数は大幅に増加しており、「無料会員登録によって利用できるコンテンツも充実させている」として積極的な活用を呼びかけた。