【米オーランド発】製造業向けのソフトウェアを開発・提供するスウェーデンIFS(アイエフエス)は米国時間10月13~15日、年次のグローバルイベント「IFS Unleashed 2026」を米フロリダ州オーランドで開催した。新たな生成AIインターフェースとして、社内の産業オペレーション情報を基にしたプラットフォーム「IFS Intelligence」を発表した。
米オーランドで開催された「IFS Unleashed」
IFSはERPやEAM(設備資産管理)、FSM(フィールドサービス管理)などを単一のクラウドプラットフォーム「IFS Cloud」で提供している。日本市場で注力する製造、航空宇宙・防衛をはじめ、エネルギー・公益事業、建設、交通輸送、通信といった業界に特化しているのが特徴で、現場とオフィスなどの異なる環境について、経営管理の観点から横断した業務効率化や意思決定を支援する。
AI機能に関しては「産業用AI」として、業務プロセスへのシームレスな組み込みを図ってきた。今回発表したIFS Intelligenceは複数のAI機能を統合した基盤となる。同社とサードパーティーベンダーの製品からリアルタイムデータを収集・分析し、財務や人事、製造、保守など、幅広い領域を一体的に扱う。
マーク・モファットCEOは、日々直面する注文ミスや部品の不具合などの事象は、保守、生産、財務、顧客満足度などあらゆる分野に影響すると指摘。「IFS Intelligenceはそのすべてを把握する」と述べ、課題解決に貢献する製品だと打ち出した。
主要機能は三つで、チャット形式の「Cowork」は、自然言語による問い合わせでシステム上の情報を照会できるほか、問い合わせ内容を踏まえて申請や計画変更などの処理も実行する。「Loops」は、業務別のAIエージェント「デジタルワーカー」を複数連携し、一連の業務を自律的に遂行する。「Runway」は拡張開発を支援する機能で、自然言語で伝えた要件を基に実装まで担う。
マーク・モファットCEO
「IFS Intelligence」の操作画面
AIを安全に活用する「ハーネス」も提供
IFS Intelligenceを安全に運用するため、「ハーネス」と呼ばれる制御・管理レイヤーの「Industrial AI Harness」も発表した。社内の権限設定やポリシーをAI利用時にも反映する。
背景には、産業分野の企業ではAIの導入にあたり、安全性や品質を担保する統制の整備が追い付いていないという課題がある。同社の導入対象業種への調査では、エージェント型のデジタルワーカーを導入した割合は43%だった一方、安全性や品質、ミッションクリティカルな業務についてAIの出力を検証している回答者は11%、機密データや輸出規制の対象となるデータをAIで扱う際の管理の仕組みを整えているという回答も11%にとどまった。
そこでIndustrial AI Harnessでは、既存のIDや権限の設定、ビジネスルール、承認プロセス、監査管理の仕組みに従ってAIが動作するよう設計する。IFS Cloudを基盤として接続先システムから権限とアクセス制御を引き継ぐため、生データが外部のAIプロバイダーに送信されないという。このほか、AIによるAPI呼び出しやLLMの入出力の記録などを通じてハーネス機能を提供する。
IFS Intelligenceのサービス体系は、導入企業の全ユーザーが全ての機能を利用できる「ユニバーサルライセンス」とし、機能を制限する段階的なプランは設けない。
専門性高いパートナーと開拓
グローバルのチャネルパートナー戦略について、ニック・デント・Global Head (グローバルヘッド)of Channelが週刊BCNの取材に答えた。パートナーの持つ「専門性」を生かしたデリバリーに注力する姿勢を強調した。
デントグローバルヘッドはIFSと連携するパートナー像について、特定業界の業務知識に長けていることに加え、「当社が提供しているソリューションを理解した上で、スペシャリスト的なパートナーになってもらうことを目指している」と説明した。パートナーが自走する「セルフサステナブル」の姿勢で、専門領域の市場開拓をともに担い、製品の変化にも迅速に対応することを期待。その上で、新たな市場を開拓する際には、新規パートナーとの協業も視野に市場開拓を推進していくという。
パートナーが専門性を持つことで、新製品のIFS Intelligenceの導入でも高付加価値を提供できるとした。具体的には、顧客要件を踏まえた活用の提案によって導入効果を高められると語った。(春菜孝明)