視点

デジタルコンテンツの流通

2002/03/11 16:41

 IT革命の究極の目的は、物やデジタルコンテンツの自由な流通にある。昨年はe系ビジネスにとって受難の年であり、多くのネット系ベンチャーが消えた。しかし、インターネットによる航空券の販売、株式の売買は着実に増えている。コンテンツも我が国ではまだまだパッケージ販売がネット販売を上回っているが、アメリカの音楽愛好者はネットからダウンロードして聞くのが常識になった。

 日本でもブロードバンドの普及で2005年にはインターネット利用者が8000万人を超える。そうなれば、デジタルコンテンツのネット受配信は必要不可欠である。

 ところで、デジタルコンテンツの自由な流通市場を阻害しているものに、著作権の桎梏がある。

 放送番組に関して欧米ではプロデューサー(製作者)が番組の脚本、音楽など一切の権利を契約に基づき所有しており、放送会社には制作費の70-80%位でファーストランの放送権を許諾する。残りは再放送権や二次利用権などで回収する。我国でも一部このようなメカニズムは存在するが、一般には各当事者が権利を保有したままで、権利が錯綜している。

 ようやく昨年秋から著作権等管理事業法が施行され、著作権および著作隣接権を管理する事業への参入が容易になり、取扱われるコンテンツも仲介業法で小説、脚本、音楽、楽曲の4種類だったのが、ゲーム、写真、実演に至るまで適用されることになった。

 こうした政府の努力にもかかわらず、どれだけコンテンツ制作者が安心してネットにアップロードする気になるか疑問である。利用者の本人認証、利用者からの使用料の徴収と分配の基盤ができていない。利用者側も、デジタルコンテンツを受信するだけでなく、自ら使用して知的社会に貢献したいと思っているが、他方利益享受に不安がある。

 1996年に採択されたWIPO(世界知的所有権機関)の新しい枠組みに従い、我国でも99年著作権法の一部改正で、権利管理情報(著作権や権利者等を特定する管理情報)が著作物に付帯された場合の保護がうたわれた。しかし付帯は任意であり、付帯が普及しなければ、著作物を利用したい場合、利用者は誰にどうやって連絡すれば良いのか判らない。

 山積みの課題に対し、政府、業界、消費者が三位一体で環境づくりを行う必要がある。
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