テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>30.ITによる業務改革

2004/03/01 16:18

週刊BCN 2004年03月01日vol.1029掲載

 「予算効率の高い簡素な政府」をめざして、ITによる業務改革を実施する72分野の業務・システムが2月10日の各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定した。それに先立って小泉首相の指示で2月5日に「行政効率化関係省庁連絡会議」も発足。公共事業のコスト削減と並んでITによる業務効率化が重要な政策課題に位置付けられたことで、今後は72分野の最適化計画の策定作業も急ピッチで進むことになりそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

72分野で最適化計画策定へ

 「これまでもそれぞれの分野ごとで業務・システムの最適化をめざしてきたわけだが、省全体、政府全体で見て最適化が図られているかどうかが重要だ」。阿向泰二郎・総務省行政管理局副管理官は、今回の最適化計画策定の狙いをそう説明する。昨年7月の電子政府構築計画では、各府省で共通な人事・給与などの内部管理業務、LANや霞ヶ関WANなどの共通基盤システム、各府省の個別業務システムの3つについて、最適化計画を策定することが決められ、各府省で業務の棚卸作業が進められてきた。

 今回決まったのは、府省横断で取り組む21分野とその担当府省(表)、さらに各府省で個別に取り組む業務・システム51分野だ。業務・システム最適計画策定指針(ガイドライン)の第2版もリリースされた。府省横断で取り組む21分野のうち、人事・給与等業務など8分野は電子政府構築計画にすでに盛り込まれていたが、新たに研修・啓発業務など13分野が追加された。「災害に関する情報は河川や消防など様々だが、各府省のホームページに埋もれてわかりづらいようでは困るわけで、国民から見れば一元的に提供される必要がある。統計業務や国家試験業務なども共通で行える業務として21分野に加えた」(阿向副管理官)。電子入札や施工管理などを行う公共工事支援システム(CALS/EC)も共通業務・システムとして最適化計画が策定されることになった。

 個別業務システムでは51分野67システムを対象に見直しが進められることになり、このうち総務省の総合無線監理システムや法務省の入出国管理システムなど26がレガシー(旧式)システムだ。今後、72分野の最適化計画は03-05年度のできるだけ早い時期に策定する計画だが、引き続き各府省で業務・システムの分析が進められ、新たに追加される分野が出てくる可能性はあるという。最適化計画では、業務・システムの機能・役割、最適化の基本理念を明確化するとともに、最適化による経費削減効果や業務処理時間の効果を具体的に書き込むことが求められる。さらに立案された最適化計画は、民間専門家のCIO補佐官による評価、CIO補佐官等連絡会議への報告・助言、さらにパブリックコメントを経て決定される仕組みで、レガシーシステムの場合は最適化計画の前に刷新可能性調査のチェックも加わる。

 今後の注目ポイントは、最適化計画にどこまで具体的な効果を書き込めるかである。効率化を進めれば要員削減などの難しい問題も避けて通れなくなるだけに、自らが前向きに取り組む姿勢が重要となる。最適化計画が策定されれば実際にシステム開発がスタートするわけだが、情報システムの調達方法がどう変わるかも注目だ。これまでは大手ベンダーに丸投げされるケースが少なくなかったが、最適化計画によって具体的な仕様などが明確になれば、発注者もシステム調達を行いやすくなる。情報システムの調達では、これまでダンピング受注などの問題も発生していただけに、システム調達でも効率化の実現が期待される。

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