テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>45.電子申告の普及に向けて

2004/06/21 16:18

週刊BCN 2004年06月21日vol.1044掲載

 電子政府構築計画が3年計画の1年目を終えたところで見直し作業が行われ、このほど改訂版が策定された。これまでに96%の行政手続きがオンライン化され、今後は年間10万件以上の申請・届出がある手続き230種類について重点的に利用促進を図っていく。年間約2600万件と言われる国税申告は、飛びぬけて件数が多い。前回に続いて電子申告の利用促進に向けた課題を検証する。(ジャーナリスト 千葉利宏)

利用にはさらなる対策も

 全国約9000の会計士・税理士をネットワークするTKC全国会では、電子申告推進プロジェクトを立ち上げ、すべての関与先が国税電子申告・納税システム(e-Tax)に対応したTKCシステムを利用して電子申告を行うとの推進方針を掲げて取り組んできた。今年3月までの名古屋国税局管内で電子申告件数は所得税申告2482件、個人事業主の消費税申告488件だったが、TKC全国会の集計によると、同時期にTKC会員が行った所得税の電子申告件数は270事務所、1126件で45.4%を占めた。

 実際にe-Taxを利用してみた会計士・税理士はどうだったのか。TKCの櫻岡敏明常務に聞くと「まず、事前の準備が大変だった、という声が多かった。電子証明書のためのICカードを入手し、所轄の税務署長に開始届出書を提出して事前登録するなどの手続きが結構大変だったと聞く。しかし、実際に利用してみると『あっけなかった』、『簡単で便利だった』と好評だった」。導入時のハードルは高かったものの、実際に利用すると評価が高く、「紙の書類を作る作業も軽減できることが判り、会計士・税理士や企業の経理部門などプロの人たちには一気に普及するのではないか」との見方だ。

 先週公表された政府税調報告書では、来年度にも金融一体課税の導入をめざすほか、選択制による納税者番号の導入にも意欲が示された。団塊世代の定年退職を目前に控え、所得税申告件数が一気に増大することも予想されている。しかし、e-Taxを頻繁に利用する会計士・税理士でも電子申告の事前準備が面倒と感じたとなると、年に1度しか申告しない個人に電子申告を利用してもらうには思い切った対策が必要だろう。

 方策としては、事前準備をなるべく簡素化すること、何らかのインセンティブを付与して利用を促進することの2つが考えられる。事前準備が必要ないホームページの確定申告書作成コーナーはすでに180万件も利用され、税務署などに出向いて行うタッチパネル方式の自動申告書作成機も425万件(前年度比20%増)も利用されている。これらは一度紙に打ち出してから提出しているわけだが、そのまま電子データとして送信できる仕組みを構築できれば、一気に電子申告を拡大することは可能だろう。

 本人確認のための電子証明書は、住基カードと公的個人認証の取得を省略することは不可能だが、メーカーの協力を得てパソコンにICカードのリーダー/ライターを標準装備し、公的個人認証用ソフトなども事前にインストールすれば利用者の負担を大幅に軽減できる。電子申請によって納税番号交付を行うことで開始届出書の提出を省略することも可能だろう。現在は不可欠なe-Taxソフトも、ウェブ上や自動申告書作成機から住基カードを使って直接、電子申告できるようになれば不要にできる。住基カードと公的個人認証さえ取得すればサービスを利用できる環境を整備するほか、自ら申告した電子データを電子証明書と組み合わせて所得証明書(納税証明書)に利用できる仕組みができれば利用者のメリットも広がると考えられる。

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