“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>15.グレー領域に放置されるIPTV

2005/08/15 16:04

週刊BCN 2005年08月15日vol.1101掲載

 前号では、ICPF(情報通信政策フォーラム)第1回シンポジウムのセッションから、総務省はIPTV(IP方式のテレビ放送)を「放送」と見なしているのに対し、文化庁は著作権法を盾にして認めていないと述べた。

 その理由について、シンポジウムパネラーの1人、元総務省キャリアで政策規制コンサルティングを手掛ける風雲友社長の田中良拓氏がこう指摘する。

 「総務省が(通信と放送の融合を目指した)電気通信役務利用放送法を立案した際、文化庁とのすり合わせが不十分だった。総務省はIPTVを著作権法上も放送として扱うことを文化庁に納得してもらったと思い込んでいたが、実際は、文化庁の上層部にまで話がいっていなかった」。

 何ともがく然とする話だ。複数の省庁がかかわる法律の場合、事前に省庁間ですり合わせ、解釈を統一する。それが徹底していなかったというのである。それが現在まで尾を引く。

 現実問題として、著作権法上で放送業者と認められないと著作権処理での優遇措置が使えなくなる。厳密に法に従うなら一般的な放送は極めて困難になる。

 例えば、非“放送事業者”には、著作隣接権(著作物の制作・伝達にかかわる実演家やレコード会社、放送事業者に向けた権利規定)が与えられないので、放送した番組を無許諾で複製、再送信されても、権利者として権利侵害を訴えられない。

 また、番組のBGMで商業レコードを使う場合も、JASRAC(音楽著作権協会)など権利者団体から事前に放送・複製の許諾を得た上で著作隣接権を持つ実演家、レコード会社からも同様に許諾を事前かつ個別に得る必要がある。一般の放送事業者ならば、JASRACとの包括契約により、1回の事後処理で済むことだ。

 一番問題なのは、IPTVが放送か否かは白黒はっきりしておらず、グレー領域のまま放置されていることだ。IPTVが放送事業者として事業を営んでいても、ある日突然、権利者から訴えられると法的な後ろ盾がない。

 そのためシンポジウム参加者からは、「総務省と文化庁、どちらの法運用が合理的か、司法の場で決着をつけるべき」との意見も出ていた。電気通信役務利用放送法と著作権法の齟齬の解決が待ち望まれるところだ。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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