視点

能力認定の国際化と韓国の動き

2007/12/03 16:41

週刊BCN 2007年12月03日vol.1214掲載

 オフショア開発がさらに進んで、グローバル・ソーシングの時代がやってきた。一つの開発にかかわる人間の多国籍化が進むことになる。そこで問題になるのが技術者の能力評価である。異なる文化のもとで教育され、仕事をしてきた技術者が同一のプロジェクトを行なうことになると、世界標準の開発方法が用いられることになるが、技術者の能力が分からないと、開発計画も立てられない。

 情勢の変化を受けて、各国でIT技術者の能力認定の仕組みづくりが始まっている。国際情報処理連盟(IFIP)では、加盟国(日本の情報処理学会はこれに加盟するために設立された学会)の認定制度が国際的に通用するものであるかどうかを認定する制度が検討され始めた。

 ここで問題になるのは、世界標準の開発方法に日本の技術者がついていけるかということである。UMLが設計の標準表記法になったが、表記法をマスターできても、前提となるオブジェクト指向分析や設計を実務として行なえる技術者は、日本では極めて限られている。Javaを使った開発でも大型のものは従来型の開発方法で行なわれており、失敗が多く、成功しても開発効率が悪い。

 技術者認定では大学教育が先行している。米国では1930年代から卒業生の外部評価が行なわれており、ISOのような卒業生の能力の品質保証が成されてきた。このアクレディテーションの制度は日本でも日本技術者教育認定(JABEE)が01年から始まり、情報分野でも28の教育プログラム(学科に対応する)が、そのプログラムが掲げる教育目標を達成した教育が行なわれていると認定されている。問題は東京大学をはじめとする有力大学の教育が認定されていないことであるが、こうした大学は研究志向で教育には関心がない。米国では一流大学はほとんど認定を受けている。

 こうした情報分野の大学教育のアクレディテーションを国際的に相互認証しようと韓国から提案され、11月の初めに日本、英国、米国、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ連合から代表がソウルに集まった。そこでは、この動きを進めようという合意が成されて、ソウル宣言に7代表が調印した。韓国は、大学にとどまらず、技術者能力認定全体にこれを広げる提案まで行ったが、さすがにそこまでの合意形成はできなかったようだ。日本と中国にはさまれて、韓国は真剣に生きる道を探っているのである。
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