視点

中小IT化に「三つの波」

2008/01/07 16:41

週刊BCN 2008年01月07日vol.1217掲載

 2008年は、中小企業のIT化を促進する「三つの波」(国、SaaS、電子化)が押し寄せてくる。国内中小企業のIT化は、先進諸国のなかで下位に低迷。これが日本の「生産性」を低下させる要因とみなされ、危機感を抱いた国がようやく「実質的な」中小企業のIT化戦略を打ち出した。IT投資額を抑えながら導入できるSaaS(Software as a Service)も普及期に入り、電子納税が浸透し始めるなど、中小企業のIT化を底上げするのに明るい材料は多い。

 「第一の波」は「国」である。経済財政諮問会議は生産性5割増を目指す「成長力加速プログラム」を打ち出し、IT革新を実行する手はずを整えた。今年度は、税制優遇措置として「情報基盤強化税制」の延長・拡充やIT投資に配慮したSaaS基盤の整備など、新規予算の大幅増額と税制改正を実施する。「国のIT化戦略では初の本格予算」と大手SIerの幹部が言う通り、これでIT化が進まなければ、もはや「打つ手なし」といえるほどのテンコ盛りだ。

 米国では00年以降に流通や運輸業などを対象としたIT利用サービス業が全体の「労働生産性」上昇に貢献。日本は1985年から断続的に下がり続けたが、04年から07年にかけて4.5%上昇。それでもOECD加盟30か国で20位と順位は“定位置”のまま。原因の一端はIT力不足にある。

 それでも、日本の製造業は生産性は世界6位で高位置につけ、伸び率も大きい。半面、日本の生産性を極端に下げているのはサービス業。国はここにメスを入れる必要があった。タイミングよく、「SaaS」のビジネスが「第二の波」としてやってきた。国はサービス業を中心に、2010年までに中小企業50万社をSaaSなどでIT化する計画だ。

 「第三の波」は、「電子」である。国は電子申告・納税を加速するため、07-08年度分を「国税電子申告・納税システム」(e-TAX)で納めた所得税を臨時措置で5000円控除する。これを機に、電子申告・納税・申請が浸透し、中小企業ではネットワーク環境が必須となる。

 ただ、中小企業、なかでも零細企業は、その多くが黒字計上できず税金を納めていない。税制優遇ではなく、現金による資金援助を期待する傾向がある。日本が国際競争力を保つには、こうした課題を解決し、徹底してIT化を進めるべきと考える。システムを提供するITベンダーの力量は、ますます重要になる。

  • 1