昨年12月20日にニューヨーク証券取引所に株式を上場したSaaSベンダーのネットスイートが2月14日に2007会計年度(期末は07年12月31日)の決算を発表している。売上高は前年の6720万ドルから61.5%増加して1億854万ドルと順調に業績をのばしている。しかし、純損益をみると、昨年(3572万ドルの赤字)よりはかなり改善しているのだが、2391万ドルの純損失を計上している。

 この数字をみると、SaaSビジネスはあまり儲からないビジネスのように思うかもしれない。しかし、売上総利益(粗利)は、07年で7478万ドルもある。06年は4421万ドルである。売上高総利益率(粗利率)は、07年で68.9%、06年で65.8%という驚異的な数字になる。ちなみにセールスフォース・ドットコムの07会計年度(期末は07年1月31日)の粗利率は76.1%である。

 この粗利率の高さは、パッケージソフト・ビジネスに相当する(マイクロソフトやオラクル、アドビといった成功しているパッケージソフト企業の粗利率は70%以上ある)。この粗利率の高さは、昨年11月19日号のこのコラムで書いたように、マルチテナント方式のSaaSビジネスは、「規模の経済」が強く働くビジネスだからだ。

 粗利率がこれだけ高いのに赤字を計上しているのはなぜだろうか。その理由は決算書をみればわかる。セールス&マーケティング費用が異常に大きいのだ。ネットスイートのセールス&マーケティング費用は、06年は4389万ドル、07年は5793万ドルであり、それぞれ売上高の65.3%、53.3%に相当する。

 セールス&マーケティング費用の多さについても、正当な理由がある。それは「規模の経済」が強く働くビジネスは一人勝ちになりやすいことである。「規模の経済」が強く働く世界では、顧客を多く抱える企業、売上高の多い企業が有利になる。売上高が多ければそれだけ利益率が高くなり、研究開発により多くの資金を投じることができるし、場合によってはライバル企業より料金を下げることもできる。したがって、SaaS企業は巨額のセールス&マーケティング費用を投じて、ライバル企業より早く多くの顧客を獲得しようとしているのである。

 ここから先は蛇足であるが、ネットスイートの売上高が順調に伸びていけば、ある時期を境に決算は黒字化し、その後の利益は売上高の伸び率より高い率で増加していくことになる。