昨年11月に改訂された日本標準産業分類が4月調査から利用されている。今回の改訂では「391 ソフトウェア業」(小分類)の細分類として、従来からある「受託開発ソフトウェア業」と「パッケージソフトウェア業」に加えて「組込みソフトウェア業」と「ゲームソフトウェア業」が新設された。

 この分類に異議を唱える人は少ないかもしれない。しかし、ビジネスモデルの観点からみると「受託開発ソフトウェア業」が他の3つと併記されているのは変だ。なぜなら、他の3つのソフトウェアは大量の複製を行い、それを販売することを前提にしているが、受託開発ソフトはそうではないからだ。パッケージソフトの場合、開発に要する初期費用は大きくても、複製コストがほとんどゼロに近いため、販売本数がどれだけ増えても労働投入量はほとんど増えない。

 一方、受託開発ソフトの場合には、売り上げが10倍になれば、労働投入量も10倍程度増加する。このため、売り上げが増加しても労働生産性の向上はあまり期待できない。その結果、ソフトウェアの受託開発を行う企業の売上高利益率は、売上高が多くなってもそれほど高くならない。

 複製を販売するソフトウェアの場合、売り上げ(販売本数)が増加しても、全体のコストはそれほど増加しない。その結果、平均費用が減少し、利益率が上昇する。経済学ではこれを「規模の経済」という。しかし、受託開発ソフトの場合は「規模の経済」があまり働かない産業なのである。経済学的にみれば、受託開発ソフトウェア業は、別種のものだと考えたほうが自然である。

 ちなみに、米国政府の統計は、パッケージソフト業は「ソフトウェア・パブリッシャー」(北米産業分類番号は511 210)として「情報産業」(同51)に、受託開発ソフトウェア業は「カスタム・コンピュータ・プログラミング・サービス」(同541511)として「専門・科学・技術サービス産業」(同54)に、分類している。

 奇異に聞こえるかもしれないが、米国に比べて日本のソフトウェア産業が発展しなかった理由の一つは、受託開発ソフトウェア業とパッケージソフトウェア業を別種の産業として扱ってこなかったことにあるのかもしれない。

 今度の新しい日本標準産業分類には、大分類として「L 学術研究、専門・技術サービス」が新設された。「受託開発ソフトウェア業」は、この新しい大分類に移してもよいのではないだろうか。