DVDレコーダーの「ダビング10」が、難産の末に7月4日からスタートした。しかし、腑に落ちないのは、その決定プロセスだ。ダビング10の導入時期は、著作権権利団体や家電メーカーが合意して6月2日に決定した。にもかかわらず権利者側とメーカー側の対立で、直前になって導入のめどさえ立たない状況に追い込まれた。

 争点となったのは、違法コピーによって、著作権の権利者が被る損害をどう回避するかという問題。確かに知的所有権は保護されるべきだが、公約した導入時期を十分な説明もなく延期したのは、消費者無視と非難されても仕方あるまい。

 個人が私的使用を目的に行う複製に関しては、例外的に認めるというのが「著作権法」の大前提である。ただし、デジタル技術の進化で、個人でも精巧な複製を大量に配布できるようになったため、92年に導入されたのが「私的録音録画補償金制度」。デジタルコピーで損なわれる著作権者の逸失利益を消費者から回収するというもので、DVDレコーダーやディスクなどには製品価格に1%程度の補償金が上乗せされている。

 ところがHDDを搭載したDVDレコーダーの登場で、HDDからの直接コピーや転送が可能になった。このため暫定的に、複製できる回数を最低限に制限するということで、04年から導入されたのが「コピーワンス」だ。

 これは消費者の側に立てば過剰防衛という性格が強い。著作権法で認められている個人の私的複製権が、補償金と1回だけのコピー制限という二重の縛りを受けていることになるからだ。「ダビング10」は、こうした締めつけを緩める目的で、06年頃から導入の話し合いが進められてきた。しかし、土壇場になって「HDDにも補償金制度が必要」という権利者側の主張がたちはだかり、導入延期にもつれ込んだという経緯がある。

 双方言い分はあるにしても、補償金制度自体、最近のネット配信や動画サイトなどをまったく想定しない時代の制度である。HDDへの課金となれば、パソコンから携帯音楽プレーヤーにまで補償金の対象が広がりかねない。が、それは「iPod」に代表される新しいネット文化のすう勢とは逆行する。ネット上でのコンテンツの2次利用は著作権侵害の問題をはらみながらも、新しいビジネスチャンスを拡大させている。古い制度にしがみつくだけでは、消費者不在どころか世界の潮流からも見放された不毛な議論になりかねない。