IT経営コーディネート 企業活性化にITCの妙手

<「IT経営」コーディネート 企業活性化にITCの妙手>76.「IT経営力大賞」シリーズ ラブリークイーン(下)

2009/01/12 16:40

週刊BCN 2009年01月12日vol.1267掲載

IT活用で利益率の改善進める

 ラブリークイーンは、高価なPDAの代わりに、汎用的で安価な携帯電話を活用したシステム「ハッピーフォーカス」を全国約700店舗すべてに導入することで、顧客ニーズへの迅速な対応と店頭在庫の大幅圧縮に道筋をつけた。店舗の形態上、店舗ごとに個別のPOSレジを設置できないケースが多い。携帯電話はこの課題を解決する最適なツールとして機能している。店頭在庫の圧縮は利益率の向上のため欠かせない。ここ数年の経常利益率は3%を行ったり来たりと、収益力の向上が課題である同社にとって、在庫状況がほぼリアルタイムで把握できるようになったことは大きな強みになる。

 店舗は、百貨店やGMSにテナントとして店を出す方式と、百貨店などに商品を卸して、販売を委託する方式の大きく2形態がある。委託販売は、百貨店に商品を卸した段階で売り上げが立つものの、百貨店のPOSレジを使うため、販売状況は逆に分かりにくい。委託販売したあとも、もし売れ残れば返品され、在庫処分の費用がかさむ。ハッピーフォーカスの仕組みを導入し、FA(ファッションアドバイザー=販売員)が販売時点の情報を本社に送るようになった2006年3月以降は、在庫状況をほぼリアルタイムで把握。経営の透明性を大幅に高めた。

 小川貴義ITCのアドバイスのもと、今、進めているのは本社の販売・在庫管理システムなどバックエンドシステムの整備だ。実は、ラブリークイーンの基幹業務システムはかつて幾度も整備の機会を逃してきた。過去に2億円余りの予算を組んでレガシーシステムをオープン化する再構築を大手SIerに依頼したことがある。丁寧に要件定義をしてくれたまではよかったが、各部門の要求をあまりに聞きすぎたためにシステムが肥大化。見積もり予算が5~6億円に膨れあがり頓挫してしまった。システム担当の井上真典常務は、「限られたIT予算しかない中小企業にとって、コストは重要な要素」と話す。

 今回の基幹業務システムの刷新では、レガシーシステムを残しつつ、会計・給与などを部分的に切り出した。会計はICSパートナーズ、給与はオービックビジネスコンサルタント(OBC)など割安なパッケージソフトに置き換えた。店舗から集まる情報は、ウイングアークテクノロジーズのビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Dr.Sum(ドクターサム)」で分析できるようにした。受発注や在庫管理は既存システムに残しつつ、「パッケージを使える部分は積極的に活用」(小川ITC)。フロントエンドとバックエンドの両方の改善を進展させる。ラブリークイーンではITシステムの活用により、向こう3年で在庫を昨年度(2008年5月期)比で3割削減。経常利益率を5~7%に高めることを目標に据える。
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