視点

「著作権」の重要性を見直そう

2010/04/15 16:41

週刊BCN 2010年04月12日vol.1329掲載

 ACCSではこれまで毎年、著作権の解説書を発行し、講演などのテキストとして使用してきた。これを今年は全面的に書き直し、新たに『図解 わかる著作権』としてワークスコーポレーションから4月に発行する。この本は、著作権に関する解説が中心だが、グラフィックデザインや広告写真、映画などコンテンツ制作に関わる四つの業界団体と、Webや広告、映画の制作などを行っている企業5社から話を聞き、そのインタビューを26ページにわたって紹介している。このインタビューを通じてよく分かったのは、彼らが自分たちの著作権などを保護するため、著作権法をはじめとする知的財産権関連法令を勉強し、さまざまな工夫を凝らしていることだ。

 ファイル共有ソフトなどによるインターネット上の違法アップロードは後を絶たず、その対策として、著作権法改正も行われている。いわゆる「ダウンロード違法化」として、権利者に許諾なくアップロードされた著作物を、違法なものであると知りながらダウンロードして録音・録画する行為が「私的使用目的の複製」の範囲から除外されたことで、今年からはアップロードだけでなく、ダウンロードも違法になった。

 こうした法制化による対策の一方で、コンテンツづくりに携わる人は、自分自身の著作物をどう流通させるかについて、『図解 わかる著作権』で紹介した企業のように、もっと意識するべきなのではないかと考えている。「権利の上に眠るものは保護されない」からだ。もちろん、著作権者には、自身の権利を主張しない自由もある。しかし、インターネットを通じて、著作物はやすやすと海を越える。そのとき、日本のクリエイターは権利を主張しない、すなわち「黙示の承諾」があるとみられるなら、海外では無断で自由に使われてしまう。その半面、海外のクリエイターは日本の無許諾ユーザーを訴えないとは限らない。日本にはゲームやアニメ、コミックといった素晴らしいコンテンツがありながら、将来、日本のコンテンツ産業全体としてみたときには、海外との関係で著しい不均衡が起こることを危惧している。

 コンテンツにとって、著作権が「最後の砦」であることを自覚し、その著作物をどう流通させてどう売るか、どう対価を得るか、そして、そのためには法と教育と電子技術の観点からどこまで保護すべきかといった視点が、創作活動とともに、ますます重要になってくる。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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