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<クラウド・RIA 構築環境、現場レポート 第1回>自社システムがわからない――マジックソフトウェア・ジャパン/首都圏営業部担当部長 工藤恵記

2010/10/20 20:29

 今日からしばらくの間、いわゆる「クラウドコンピューティング」の動向について、日頃観察していて気がついたことや、情報産業側の立場から見た私的クラウドを週2、3回のペースで紹介する。

 私の日頃の活動分野であるRIA(Rich Internet Applications)、EAI(Enterprise Application Integration)ツール市場から、これらを活用したクラウド環境の現状などを、現場からTwitterのようにつぶやく(ぼやき)。

 簡単にこれらの分野を説明しておきましょう。RIA(リア)は、ひと昔前にはリッチクライアントといわれていた分野だ。このテクノロジーはようやく普及し始めてきていて、クラウド環境でも一つのコア技術になっている。EAIは、サービスハブや連携サービスといわれ、既存データやクラウドのデータをリアルタイムで接続し、データをシステム間で有効活用する方法である。詳しい内容は、IT用語サイトなどでご確認いただければと思う。これら二つの分野はクラウド環境では重要なテクノロジーで、クラウドベンダー、アプリケーションベンダーには必ず必要になってくる要素だ。

 さて、本題です。今は、人員もIT費用も削減されるのが当たり前になってきている時代。昨今は企業の情報システム部門に、人材が豊富に配置されているわけではない。とくに中堅・中小企業では、その傾向が顕著だ。

 現場での経験から、一つのエピソードを紹介しよう。わが社は毎月、体験セミナーを開催していて、参加されるエンドユーザー様に、その場でRIAへの興味の度合いや現状のお困りな点、現在のシステム構成などを聞いています。営業としては、非常に貴重なヒアリングになる。先日、そのセミナーに中堅の物流系企業の情報子会社から2人が参加したとき、さっそく詳細を聞いた。特殊なケースかもしれないが、そこには、正直いって非常に驚かされる実態があった。

 この物流系企業は、IT全盛の頃にシステムをどんどん増やし、またこの情報子会社経由の外注先への依存度も大きく、現状のシステムに至っていた。このところの不景気で、少ない人数でシステムを管理しなければならなくなっている。しかし、システム管理までは何とかできても、メンテナンスは発生するし、機器も古くなる。ちょっとしたシステム変更が生じても、プログラムを作成した人が在籍していない状況で、仕様書もない。とりあえずデータだけ別のデータベースへ移行し、システムを延命しているのが現状だとか。

 このようなありさまでいいのだろうか……、と思いつつ話を聞いていたのですが、彼らの話はだんだん愚痴になっくる。「このシステムはここがまずいんですよ、前任者がなぜそうしたのかわからない。まったく困り果てています……」って約2時間。内容も内容ですが、よく聞いていたな、と自分に感心した次第だ。

 これは笑い話ではない。どの企業も、少なからず思いあたる節があるのではないか。子会社や外注に任せっきりになり、システムを管理することに追われ、気がついたら、一つひとつのシステムが分からなくなっている。さらには、特定の人にしかわからない「人材に依存したシステム」になっているわけだ。

 かつて、企業のIT部門は、システム開発を手がけ、隅から隅まで。ある程度は把握していた。自力でプログラム開発ができる範囲も、それなりに広かったはずだ。それが、いつの間にか開発は専門の企業にお願いし、言語も複雑なツールを使うことが主流になっている。.NET Java PHPなどの記述言語を使いこなせるエンドユーザーは、どれくらいるのだろうか。

 一時期はやった「エンドユーザコンピューティング」という言葉の通り、開発ツールベンダーはプログラム開発をエンドユーザーに返すべきだ。クラウド開発環境にも、共通する点が大いにある。システムもアプリケーションも、本当にエンドユーザーが行わなければならない時期にきているのではないだろうか。そしてそのためには、楽にプログラム開発ができる環境が必要――。そんな便利な魔法、ほしくなりますね。

・次回に続く


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BCN Bizline編集部
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