梶フエルト工業(梶朋史代表取締役)は、iPadの活用による製造現場の業務効率向上を目指して、クラウドサービスの採用を検討した。しかし、問題があった。「『Googleドキュメント』は、勝手に図を圧縮してしまう。ファイルの階層分けも難しい。『Dropbox』も試してみたが、今一つだった。結局のところ、手組みのウェブシステムに落ち着いた」(梶代表取締役)。

 ウェブシステムの構築を手がけたのはITコーディネータ(ITC)の廣木秀之氏。「開発期間は1か月ほどだった」という。

 クラウドではないが、iPadを活用してリアルタイムに現場間の情報を連携する。各種ドキュメントは、ネット上にアップされているものが最新版。ドキュメントが一元管理されているので、バージョン管理の運用を整備できた。

 材料の仕入れ情報は、iPadで確認してタイムリーに生産・出荷できるようになった。基本的にはメールを用い、各現場のiPadに仕入れ情報を流す。それを読んで担当者は作業の段取りなどを考えることができる。難しい操作が必要ないということもポイントだ。現場作業員がキーボード・マウスアレルギーをもつこともなく、現場に浸透しているという。

 iPadを活用したウェブシステムは、経営に効果を現しはじめている。顧客の要望に柔軟に応えることを可能にして、機会損失を防いでいる。梶代表取締役は「作業効率がアップして利益率が向上した」と話す。即事納期回答不能率は、20%から5%にまで減少した。

 プロジェクトの進行にあたって、梶代表取締役は廣木氏と月に1回ほど打ち合わせを行った。「社内では気づかない視点でアドバイスをもらったり、同業種・他業種を含めた事例を紹介してもらったりして、CIO的な役割を果たしてもらっている」という。

 廣木ITCは、「営業支援などでiPadを導入した事例は知っているが、製造現場で、しかも中小企業での事例はまだ例がないのではないか」という。文字検索ができないため、画面をスクロールしなければならないなどの制約はあるが、満足度は高い。「ゆくゆくは一人1台にしたい」(梶代表取締役)としている。(信澤健太)

iPadを活用して、リアルタイムにドキュメントを確認することができる