関西のITベンダーの「今」そして「これから」

<関西のITベンダーの「今」そして「これから」>第5回 SIer系ITベンダーの動き(後編) ビルのエネルギー管理に特需 スマートシティの通信インフラ、ICTベンダーの出番

2011/10/20 16:04

週刊BCN 2011年10月17日vol.1403掲載

三井情報関西支店
工藤宏昭
支店長
KCCS
河之口達也
西日本営業統括部長
 関西地区は、今夏、定期点検に入った原発の稼働停止による電力供給不足に陥った。これを契機として、ビルのエネルギー管理など、ICT(情報通信技術)を活用した省エネソリューションの提案活動が活発になっている。三井情報をはじめとして、通信に強いシステムインテグレータ(SIer)系ITベンダーは、省エネの需要拡大をビジネスにつなげようとしているところだ。また、関西での「スマートシティ」を実現する通信インフラ構築の分野で、ITベンダーの出番がきている。

 ネットワーク構築を強みとするSIerの三井情報。関西支店の工藤宏昭支店長は、「7月に関西電力が管轄する地区の電力事情が悪化したのをきっかけとして、ユーザー企業が節電対策を急ぐようになった」という。このところ、クラウド型省エネ管理サービスの「GeM2」など、ビル単位で節電を図るソリューションの引き合いが多くなっており、提案の件数は7月以前と比べて、およそ10倍に増えたそうだ。工藤支店長は、今年の冬から来年の夏に向けて節電ソリューションの本格導入が進むとにらんでおり、「省エネ」を事業推進のキーワードに掲げている。

 全売上高のなかで大手企業向けビジネスが高いウエートを占める三井情報関西支店は、今、「事業の幅を広げて、中堅・中小企業(SMB)を対象とするビジネスに力を入れる」(工藤支店長)ことに取り組んでいる。同社は、SMBにシステム導入を提案するにあたって、新しいシステムなら節電・BCP(事業継続計画)対策ができることを訴えている。盛り上がりをみせる節電・BCPのニーズに応えることを通じて、SMB市場の開拓を狙っているわけだ。

 関西地区では、エネルギー使用の効率化を目指す動きの一つとして、ICTによる都市内の電力供給改善が注目を浴びている。いわゆる「スマートシティ」である。関西地区にはセンサなどスマートシティに必要な部品を製造する電機メーカーがひしめいており、彼らは関西のスマートシティ化に取り組んでいる。ただ、「電機メーカーはICTが本業ではないので、広い範囲でスマートシティを実現するのは難しい」(京セラ コミュニケーションシステム・河之口達也西日本営業統括部長)という点がネックとなる。ここは、ICTベンダーの出番だ。

 京都に本社をもち、関西発の大手SIerである京セラ コミュニケーションシステム(KCCS)は、来年半ばをめどに、スマートシティ関連事業を手がける電機メーカーに向けたICTインフラの構築や保守や、無線通信のエンジニアリングを本格的に展開する。河之口西日本営業統括部長は、「現在は、製品化を進めている段階だ。スマートシティ向けのICTインフラ市場のポテンシャルは大きいので、早期にサービスを開始したい」と意気込んでいる。(ゼンフ ミシャ)
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