関西のITベンダーの「今」そして「これから」

<関西のITベンダーの「今」そして「これから」>最終回 現地の取材を振り返って 早く事業の舵を切れ! 知恵を絞って明日のビジネスへ

2011/11/10 20:29

週刊BCN 2011年11月07日vol.1406掲載

 関西地区のITベンダーの取り組みを追う本連載は今回で最終回となる。現地での取材を振り返りながら、ITベンダーの動きにどのようなトレンドがみえてきたかをまとめる。8月に、およそ20社の関西ITベンダーにインタビューした。

 「関西地区のIT市場の規模は、東京港区のそれに相当する」。ある関西ITベンダーの幹部は苦笑を交えながら、本紙インタビューでそう語った──。

 『週刊BCN』は、日本の各地域のIT市場についての報道を拡充することを今年度の編集方針に掲げている。記者は、東日本大震災の影響によって西日本でデータセンター(DC)需要が活発になっていることをきっかけとして、関西IT市場の直近の動きに興味を抱き、関西地区を連載企画の対象地域に選定した。そして今年の8月、およそ2週間をかけて大阪や神戸、京都のITベンダーの動きを取材した。連載は9月にスタートし、これまで7回にわたって関西ITベンダーの取り組みを紹介してきた。

 現地を訪れて取材を進めるにつれて、関西地区のIT市場は、大手ベンダーのDCビジネスが活性化している反面、さまざまな課題を抱えていることがわかってきた。インタビューを通じて、各社がどんな壁に直面しているかを、肌で感じることができた。そもそも市場規模が東京と比べて小さいこと。それに加えて、関西地区に多い製造業の海外進出が速いスピードで進んでいること。ユーザー企業が本社機能を首都圏に移して、ITソリューションの提案先が関西から離れること──。関西のITベンダーは今、知恵を絞って、従来ビジネスの売上減少を補うべく、新しい事業領域を開拓しなければならない状況に置かれている。ITベンダーのなかでも、とくに中堅のソフトウェア受託開発会社の経営状況が厳しくなっており、今年に入って、数社の中堅ソフトベンダーが倒産してしまったと、取材でよく耳にした。

 大手ベンダーは、各国にもつ拠点と連動したかたちで、海外進出した関西企業を現地でサポートするという新規事業を展開することができる。しかし、中堅・中小ベンダーの多くはそれができない。大手と中堅・中小のITベンダーは、それぞれの新しい事業モデルを模索する必要がある。今回の取材によって、大きくいえば、二つのトレンドが浮き彫りになった。一つには、大手ベンダーは、「海外」と「全国展開」をキーワードとして、事業領域の拡大を推進する。二つ目として、その一方で、それが難しい中堅・中小ベンダーは、「省エネ」や「エコ」など、関西地区で成長が見込める市場の開拓に取り組むという戦略だ。大手にしても、中堅・中小にしても、早期に事業の舵を新しい方向に切ることが重要になっている。今回取材した各社の関係者の声から、成長路線への意気込みが伝わってきた。(ゼンフ ミシャ)
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