視点

IT人材が外資系企業への転職を重ねる理由

2011/12/22 16:41

週刊BCN 2011年12月19日vol.1412掲載

 一年の締めくくりを迎えるにあたって、IT業界のなかでの、これまでの自分の立ち位置について考えてみた。日米の合弁会社で10年、米企業の日本支社で19年の勤務経験がある。とくに選んだわけではないが、昔はコンピュータ(IT)関連の仕事に就きたいと考えた時点で就職先が限定され、そのなかで外資系企業の選択肢が多かったということだ。いったん外資系企業へ入社すると日本企業へカムバックするのは難しく、私と同様に転職して再び外資系企業に勤務する人は非常に多い。

 その理由として、会社組織の違いがある。日本のIT市場で事業展開を目論む外資系企業は、多くの場合、日本のビジネス慣習にあった会社運営を目指している。外国人社長が海外の本社から天下りして失敗する例もあるが、ITは新しい市場であるが故に、国内企業で十分経験を積んだ経営者であれば、本社の運営面のすぐれた部分を日本に取り入れて、自由な発想で活躍する場を求める人材を確保できる職場をつくることができる。一方、国内企業は、経営組織は年々改良されて欧米の体制に近いものになっているものの、世間を賑わすニュースを見るかぎり、実質的には外見を取り繕っているだけであまり進化していないようにみえる。社内融和を優先して業務調整型の幹部が幅をきかせ、組織が硬直化していく──このことは以前からいわれ続けており、自主独立型の社員は居場所を外部に求める傾向がさらに強くなってくるのであろう。国内企業の真の変革には、あと20年は必要ではないだろうか。

 次に業務選択の幅である。IT関連の業務はネットワークの発達、一般へのPC普及を契機に飛躍的に幅を広げている。業務の拡大によって細分化された分野では専門性がより求められる。そして米国で生み出された専門業務が国内の外資系企業に移植され、業務が細分化され過ぎてきた。その結果、就職先の選択肢の多さは私たちの時代と比較にならないが、他へ移ろうとする場合にキャリアの制限が発生し、外資系グループ内での転職が主流になってくるのだと思う。

 IT業界で自身が伸びていくためには、あらゆることの変化とスピードについていく必要がある。企業の性格は国籍や経営者によってさまざまであり、目標に向けたキャリアプラン+自己性格分析によって、住処を見つけることが大切な作業になるだろう。
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