視点

ものづくりを革新する“地方発の動き”

2012/11/15 16:41

週刊BCN 2012年11月12日vol.1456掲載

 ITと「ものづくり」の融合、という大きな題目は以前から主張されているが、最近、その具体的な動きとして、ファブラボ(Fabrication Laboratory)という運動が世界の先端を走っている。日本でも、鎌倉などいくつかの市が、3Dプリンタなどの新しい道具を活用して、個性豊かなものづくり拠点を形成している。

 ここ岐阜のソフトピアでも、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)の小林茂准教授が中心になって、ユニークなものづくりによる社会イノベーションを起こそうと頑張っている。それは、f.Labo(エフラボ)と呼ばれ、今年2月にソフトピアで発足し、ワークショップをはじめブレインストーミングの会や公開講座などを提供し、多くの市民とのオープンなコラボレーションを大切にしながら、プロトタイピング施設を基盤にしたコミュニティづくりを目指している。例えば、7月には「オリジナルなボタンを作ろう」といったワークショップを開催し、普段なら参加者のほとんどが男性なのに、この回だけは女性だけが集まり、夫や子どものためのボタンづくりを楽しんでいた。

 本来、ものづくりは製造業の領域であるから、生産現場での経済的・経営的な営為であり、だからこそ、効率的・合理的でしかも画一的で大規模な生産体制が優先されよう。しかし今、エフラボのような場が求めるものづくりは、従来の生産体制とは対照的であると同時に、それを補完する機能を発揮して新しい手法を提案している。一つは、製造業であっても、プロトタイプをつくることができない超小規模の企業が、自力でそれが製作可能になるというもので、今までなら下請けとしてしか生きる術がなかった企業に、そこから脱する可能性が開けるという希望である。もう一つは、ボタンづくりの例のように、生活の場にものづくりが一気に浸透することで、生活スタイルが根本から覆されるかもしれないこと。それは、消費の場でしかなかった生活に、ものづくりが直結することで、自分でつくったものを自分で使うという、一連の生活行為が自分のデザインによって始動し、そして自分に合った消費スタイルを見出す、という可能性を示唆する。これはライフスタイル革命と呼べるかもしれない。

 エフラボは、クリエイティブな思考を楽しむ人たちが集う場なので、ものづくりはいつも楽しさ満載である。ちなみに、今回のワークショップのお題は「自分の顔の3Dペットボトルキャップ作り」だ。みなさんも、参加したいことでしょう、きっと。
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