視点

地熱発電が日本を救う

2012/12/06 16:41

週刊BCN 2012年12月03日vol.1459掲載

 福島第一原発の事故を契機に、日本の電力エネルギーの供給体制をどう再構築していくかという議論が活発に行われている。議論の中心になっているのが再生可能エネルギーであり、現実に巨額の投資が行われているのがメガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電である。しかし、太陽光発電には大きな問題が二つある。一つは、発電コストが火力発電の数倍も高いことであり、もう一つは発電量が不安定なことだ。太陽光発電は太陽の出ている昼間しか発電できず、晴天時と曇天時、雨天時では発電量が異なる。

 発電コストが高くて不安定な電源を原子力発電の代替にすることはできない。かといって、二酸化炭素を大量に排出する火力発電への依存度を高めることは、地球環境を考えれば避けるべきだろう。そう考えると、再生可能エネルギーのなかで、日本にとって最も有望なのは地熱ではないだろうか。

 地熱発電は、初期投資は嵩むものの維持費は安く、長期運用すれば発電単価は10円/kW以下になると試算されており、発電コストは太陽光発電の5分の1から3分の1程度である。天候に左右されることなく、安定的な発電が可能である。火力発電に比べて二酸化炭素の発生量は極めて小さく、地球環境にやさしい。化石燃料の枯渇や価格の高騰というリスクもない。おまけに、火山国である日本は、世界的にみても地熱発電のポテンシャルは非常に高い。産業技術総合研究所の推計によると、150゜C以上の熱水系資源だけでも2347万kWもの地熱資源がある。さらに、アンモニアなどを気化させて発電するバイナリー発電に使える53゜C以上の低温水熱源を含めると3180万kWもの地熱資源がある。これは、原子力発電所30基分に相当する。さらに天然の熱水や蒸気がなくても、地下の高温岩体を水圧破砕し、水を送り込んで蒸気や熱水を得るという高温岩体発電が可能になれば、さらに原子力発電所数十基分の発電が可能になるといわれている。

 あまり知られていないが、日本はすぐれた地熱発電技術を保有しており、富士電機、東芝、三菱重工の3社で世界の地熱発電設備容量の約7割に相当する地熱発電プラントを供給している。

 問題は、地熱発電に適した場所の多くが国立公園内や温泉地にあって、地元の反対が根強いことにある。しかし、日本のエネルギー問題、地球環境問題を考えれば、原子力発電に代わるベース電源として、もっと積極的に地熱発電の開発を進めるべきだと思う。
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