「私はドライな性格で、部下に営業の基本を教えることを責務と考えている。『オレについてこい』というようなカリスマ的な存在になろうとは思っていない」。ERP(統合基幹業務システム)を開発・販売するビーブレイクシステムズでソリューション営業チームを率いる笹山秀樹さんは、自分をそう語る。2005年、同社にとって二人目の営業担当として入社。上層部に信頼される営業パーソンとして、当時の20人から現在の120人に社員が増えたビーブレイクシステムズの成長を現場で支えてきた。現在は、リーダーとして、部下の管理に精を出している。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
[語る人]
ビーブレイクシステムズ 笹山秀樹さん
●profile..........笹山 秀樹(ささやま ひでき)
1981年、千葉県生まれ。早稲田大学を卒業して、広告事業を手がけるベンチャー企業に入社。2005年、ビーブレイクシステムズに転じた。同社の取締役に続く二人目の営業担当として、幅広い業務に従事。11年、「中小企業診断士」の資格を取得。12年、全製品・サービスを扱うソリューション営業チームのリーダーに就任。
●所属..........営業部
ソリューション営業チーム
リーダー
●担当する商材.......... クラウド型ERPパッケージ「MA-EYES」など、すべての商材
●訪問するお客様.......... システム開発会社など
●掲げるミッション.......... ベンチャー企業として着実にビジネスを伸ばすこと
●やり甲斐.......... 会社の成長とともに自分も成長する
●部下を率いるコツ.......... 部下の自己啓発やスキルアップを積極的に支援すること
●リードする部下.......... 3人
人を尊重する環境を築いて活発なERP需要に対応
私が統括するソリューション営業チームは、クラウド型ERPパッケージ「MA-EYES」だけでなく、海外拠点向けの統合管理システムや技術サポートなど、すべての商材を担当している。部下の人数は3人。取締役の高橋(明)と私の二人しか営業担当がいなかった入社当時と比べて、ずいぶん体制が整ってきたと思う。だが、マンパワーは十分ではない。景気回復に伴って、ERPへの引き合いが活発になっている。今の人数でも案件に対応するためのリソースが足りないほど、ビジネスが好調だ。
部下が効率よく動くようにリードし、お客様のニーズに迅速に応えるようにすることが、私のミッションである。
入社してからの9年間、営業関連のあらゆる業務に携わらせてもらった。仕事の量が多く、会社が成長するとともに業務が変わる流れも速くなって、カリスマ性を発揮するというよりも、こつこつと業務をこなして会社を土台で支えるという仕事の仕方を身につけてきた。部下の管理に関しても、同じようにドライなスタイルを貫いている。本当は、部下に派手な失敗をさせて成長を促したいところだが、とてもそんなことができる余裕はないので、案件がうまく進まないときには私が商談に入って部下をバックアップする。
昨年、技術支援の案件でトラブルが起きて、部下が困っていた。お客様に値引きを要求されるなど、不利な条件をいろいろ押しつけられて、どう対応すればいいかと頭を抱えていた。そのとき、私が案件を引き継いで、先方に「これでは契約できません」と、はっきり伝えることにした。この措置によって、不採算案件で業績に影響が出ることを防いだ。今年からは、部下たちをバックアップしつつ、もっと仕事を最後まで任せて、彼らの成長につなげたいと考えている。
営業部のメンバーは、不動産とか、証券とか、いかにも「営業」という業種で仕事をしてきた経歴をもつ者が多い。彼らは、泥臭いセールス活動に慣れていて、粘り強さを武器にする反面、例えば、不必要に細かいことをメールで報告するなど、無意味な行動を取ることがある。当社では、リーダーの私も部下に対して必ず「です、ます」などの丁寧な言葉を使ったり、社員に過酷な残業をさせなかったりと、人を尊重する環境をつくっている。
そのために、私は部下たちにERPという非常に難しい製品についての知識を早く身につけさせるとともに、当社の社風や営業ポリシーを理解してもらうことにも、リーダーとして、力を注いでいる。
[紙面のつづき]製品ごとに担当を分けてスペシャリストを育てる
クラウド型のERPパッケージや技術サポートなど、複数の製品を扱う私のチームだが、昨年までは各営業スタッフがすべての製品を担当していた。ERPは難しい製品で、理解するまでに時間がかかるので、複数を担当することになると必要な知識を習得が追いつかなくなることがある。うちのチームは異業種から入ってきたスタッフが多いので、多くの製品への対応はなおさら負荷になっていた。
そこで、今年からは製品ごとに担当を分けて、一人ひとりが自分が担当する製品のスペシャリストになるよう、思い切って体制を変更した。部下からは「自分のミッションが明確になって仕事がやりやすくなった」という声が上がっている。最近の営業実績を見ても、部下のモチベーションが高まっていることがわかる。
先日、1年前にチームに入ってきたスタッフの営業訪問に、久しぶりに同行した。彼は、最初の数か月は私に助けを求めたり、トラブルになった案件を私が引き継いで解決したりと、「まだまだだな」と感じさせる部分があった。しかし、今回の同行で一人前になった彼の頼もしい姿を見ることができた。その成長ぶりを、育成に力を入れてきた上司としてうれしく思った。
今後も、一流のERP営業のプロ集団を目指して、部下たちの力を引き出すことを心がけ、ビジネスを大きくしていきたい。

CYPRIS(キプリス)ブランドの名刺入れは、両親からの就職祝いの贈り物。長年、愛用している。「もともとは財布とのセットでもらったのだが、財布は盗まれたので、今は名刺入れだけ」と苦笑する。