将来を見据えて世界に挑む

　フリーエンジニアとして独立して15年、ソフト開発だけでなく、技術系書籍の執筆とセミナー・イベントでの講師業まで手を広げた池田成樹は、今年、新たな試みを始める。世界への進出だ。

　池田は、今年4月下旬、フィリピンに足を運んだ。日本のITベンダーは、コスト削減を狙って人件費が低い国に対して開発プロジェクトの一部を発注するオフショア開発を利用する。だが、オフショア開発は、フリーエンジニアにとって脅威になる。「よその国のソフト開発の事情を知ることと、漠然とだが、他国にチャンスはないかを探りに行った」。

　約1週間のフィリピン滞在で、池田がビジネスチャンスを感じたのが「マッチング」だった。英語を学びたい日本人の開発者と、日本のソフト開発スキルやものづくりを学びたいフィリピンの開発者をマッチングさせれば両者に価値を提供できるので、ビジネスになると考えた。この仕組みを、フィリピンに本社を置くソフト開発学校や英語学校と協業して進めようとしている。フィリピンは他の東南アジア諸国に比べて、なまりのない英語を話す人が多いことから、この国に目をつけた。

　「日本のソフト開発者は、今後、他国の企業と仕事することが求められ、英語を話す力は必須になる。今回の仕組みには、日本の若い開発者たちに、英語を学ぶ環境を提供してあげたいという気持ちと、日本と他国のITベンダーがスムーズに開発協力できるような仕組みをつくりたいという思いがある」。フリーエンジニアとして15年、個人事業主として自分のビジネスだけを考えていた池田だが、日本のソフト産業、若いソフト開発者の将来を見据えたビジネスを生み出そうと考え始めた。頼もしい限りである。（おわり）［文中敬称略］