強みは「コーディネート力」

　フリーエンジニアとして4年目の白井千晶（45歳）は、独立する前に3社の企業に勤めた経験がある。出身地での勤務を希望し、和歌山県に本社を置く建設会社の情報システム子会社からキャリアをスタート。その後、東京に本社を置く大手建設機器メーカーの情報システム子会社へ、そしてITベンチャーに移った。「中小企業に大手、歴史の長い企業に若い企業、それぞれ異なる環境で仕事をしてきた。これまでチャレンジしたことがなかったのが、一人で働くことだった。それが今の道を選んだ理由」。

　独立後は、ITベンチャー時代に懇意にしていた顧客が白井を頼って仕事を発注してくれた。収入は企業に勤めていた頃よりも増えている。白井のビジネスは、開発ではなく「コーディネート」。顧客には、ユーザー企業とITベンダーがいる。ユーザー企業であれば、経営層や営業部門といったITを直接利用する層と、情報システム部門の間に入り、お互いの溝を埋める。ITベンダー向けには、うまくいっていない開発プロジェクトの立て直しやプロジェクトマネジメント、そして技術者のトレーニングだ。白井に舞い込んでくるのは、顧客の社内では解決できない、「外部の第三者」だからこそできる仕事だ。いずれも、独立前に勤めていた企業での開発者、プロジェクトマネージャー、経営幹部としての経験が生きている。

　個人事業主として4年目を迎えた今年、白井は新たなビジネスにチャレンジする。その名も「グローバルアウトソーシング」。アジアを中心に世界にいるフリーエンジニアを組織して、受注したプロジェクトを世界のフリーエンジニアで共同開発する壮大な構想だ。オフショア開発と日本型開発がそれぞれもつ利点を組み合わせようとしているのだ。（つづく）［文中敬称略］