南條浩一さんは、多くを語りはしない。話す内容と言葉を慎重に選び、相手の印象に残るよう、声に力を込める。「技術に関してもお客様の質問にすぐに回答できるよう、取り扱う製品については徹底して勉強している」。部下が難題に直面したときは、すぐに答えを言わず、部下に考えさせてから解決に導く。「自分の意見を押しつけたくない」。ITディストリビューション事業を手がけるソフトバンク コマース&サービスで、販売パートナーにハードウェアを提案する部隊を率いる南條さん。この11月、ソフトバンクの孫正義社長から賞をもらうことになった。そんな南條さんの活躍ぶりは──。
南條 浩一(なんじょう こういち)
2004年、ソフトバンクBBに入社し、営業に携わる。12年、課長に就任。14年4月、ソフトバンクBBからIT流通事業が分社・独立し、ソフトバンク コマース&サービスが設立されたことで現職に就く。13人の部下をもつ。
徹底した勉強で的確な製品説明
今年4~6月の四半期、私が統括するチームは、当社のなかで売り上げNo.1に輝いた。11月に、ソフトバンクグループとして開催される表彰式で、孫社長に賞を渡してもらうことになっている。初めての経験なので、今から緊張している。私は、お客様のところに出向いたときには、部下をフロントに立たせて、自分は後方で支援に回るようにしている。表彰式では、私はチームの代表として賞を受け取るが、部下たちが自立して営業活動に励んでいるからこそ、今回、トップの売り上げを稼ぐことができたことをよく理解している。
最近、力を入れているのは、エンドユーザーに直接提案をすること。ディストリビュータの提案先は、基本的にはシステムインテグレータ(SIer)などの販売パートナーだが、とくに仮想化の案件に関しては、エンドユーザーがなかなか導入に踏み切らないことが多い。ためらう理由はどこにあるのか、また打開策として製品をどういうふうに組み合わせれば採用していただけるか、といった情報を得るために、当社もエンドユーザーを訪問して、最前線で提案に関わることにした。
エンドユーザーとのやり取りでは、当社の営業担当者が技術にも精通し、製品のすぐれた点をわかりやすく説明することがポイントになる。取り扱う製品の数が非常に多く、覚えるのが大変なので、営業は技術に関しては逃げ腰になりがちだ。しかし、私はお客様のどんな質問にもすぐに的確に回答できるよう、勉強会を開いたりして、製品知識をしっかりと身につけるよう部下に促している。先日、ある部下にエンドユーザーから電話が入ったとき、部下はつまずくことなく、お客様の質問にていねいに答えていた。私は横からその姿を見て、「よく勉強しているな」と、ちょっと安心した。
課長に就任してまだ2年。マネージャーとしての腕をもっと磨いて、リーダーシップを発揮する必要を感じている。尊敬して見習っているのは、入社のときからずっとお世話になっている今の上司。例えば、部下の席に行って直接会話するのも、その上司のスタイルをまねたものだ。
チームには、外回り営業5人のほかに、営業アシスタントが8人いる。外回り営業の部下とはよく話をするが、アシスタントとのコミュニケーションはまだ足りない。彼らと個別に話す時間を増やし、その力をどのように現場で生かすかを真剣に考えたい。
最近、これまでずっときらいだったゴルフにはまっている。朝一番にゴルフ場に出て、神経を集中してラウンドしたら、意外にもいいスコアが出たことがきっかけになった。努力は必ず報われる。頑張って、今後もトップの売り上げを目指そう。
私の営業方針を表す漢字は……「信」
IT市場を取り巻く環境が大きく変わりつつあるなかで、ディストリビュータとして販売パートナーに「よりよいもの」を提供しなければならないという信念をもっている。昔、お客様のニーズを聞かずに、こちらが「よりよいもの」と考えた提案をしたが、まったく受注につながらなかった。こうした苦い経験をして、今はお客様との会話のなかから提案のヒントになる情報を探し、お客様に合った製品を提案・提供することによって、強固な信頼関係を築くよう心がけている。