ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンク C&S、溝口泰雄社長兼CEO)は、グループ会社のソフトバンクテレコムとともにヴイエムウェアと協業し、IaaSのパブリッククラウドサービス「VMware vCloud Hybrid Service」を提供するための合弁会社を設立する。今年中にはサービスの提供を開始する予定だ。この協業は、IaaS領域で早期にイニシアティブを獲るための策という。IaaS分野では、先行したAWS(Amazon Web Services)が圧倒的な地位を築いていて、これからの参入という点で劣勢が予想される。そこでソフトバンク C&Sは、合弁会社の設立によって全国に点在する販社がサービスを提供しやすい環境を整えて、一気にサービスを広めていく方針だ。また、同社のVMware関連事業は2ケタの成長を続けているが、今回のサービスによって今後も2ケタ以上の成長を維持することを見込んでいる。

友秀貴
統括部長 vCloud Hybrid Serviceを拡販するうえで、ソフトバンク C&Sが最も強みとしているのは販社。全国に7000社以上の販売網をもち、そのなかでヴイエムウェアのパートナープログラムにも参加してアクティブにVMware製品を販売している販社は数百にも上る。これまで、VMware製品の販売はライセンスが中心で、オンプレミス型のシステムを構築している企業をユーザー対象に据えていたわけだが、「最近では、オンプレミスとクラウドの両方を使い分けるハイブリッド型システムを採用する傾向が高まりつつある。まずはVMwareで仮想化環境を構築している既存のユーザー企業にクラウドサービスの利用を促すよう、販売パートナーと話を進めている」と、友秀貴ICT事業本部MD本部仮想化クラウドビジネス統括部統括部長は戦略を語る。また、販社のビジネス規模拡大に向け「vCloud Hybrid Serviceとオンプレミス向けのVMware製品を組み合わせることで、新規顧客も開拓していく」としている。
vCloud Hybrid Serviceの強みは、VMware製品で構築した仮想化環境との互換性が高いことだ。IDC Japanによれば、国内バーチャルマシン/クラウドシステムソフトウェア市場は、2013年に前年比23.2%増の444億7000万円。そのうちヴイエムウェアは、シェア90%程度を確保しているという。友統括部長は、「仮想化環境のほとんどがVMware製品をベースとしている。ハイブリッド型システムを求める多くの企業は、vCloud Hybrid Serviceを利用することになる」と断言する。
VMware関連事業については、「これまで販売網が確立しているからこそ成長し続けている」とアピールする。加えて、「ここ数年、VMware関連事業は伸び続けてきたため、売上規模が大きくなっている。母数が大きくなっているものの、vCloud Hybrid Serviceを販売するようになれば、今後も2ケタ以上は確実に成長できる」と自信をみせている。
国内IaaS市場は、AWSが圧倒的な存在感をみせていて、多くの販社を確保しつつ、さらに勢力を伸ばしている。一方、IaaSは価格勝負になる傾向が強いことから、「早期にイニシアティブを獲らなければ、ビジネスとしてうまみがなくなる」と、友統括部長はかみ締める。AWSを抜いてシェアNo.1を確保することが、ソフトバンク C&Sが掲げる当面の目標だ。VMwareの強みを生かしたクラウドサービスが、IaaS市場の勢力図をどのように変えるのか。今後の行方が注目される。(佐相彰彦)