新たな成長を夢見て会社設立

　三上智親（43歳）は、エイチ・ピー・エス（HPS）というソフト開発企業の代表取締役を務めているものの、現在、実際には一人で活動している。

　HPSを設立したのは、30歳を過ぎた2002年だった。学生時代からコンピュータと通信に魅力を感じ、独学でプログラミングを学んだ。その流れでソフト開発企業に入社。1社目は約2年、2社目は8年ほど勤めた。2社目の企業は大手ソフト開発会社の子会社で、「とにかくなんでもやらされた」と三上は振り返る。開発するシステムの種類も、そこで使う言語も多岐にわたっていて、その場その場で学んでいったという。「この会社で仕事の礎を築いた」。独立したのは、30歳を過ぎて新たなチャレンジをしたいという気持ちが高まってのことだった。

　独立を決意した三上は、「会社の規定のうえで個人には仕事を発注するのは難しいという顧客の声が多かった」ことから、独立後、しばらくして有限会社としてHPSを設立することを選んだ（現在は株式会社）。起業直後は、ネットバブルが崩壊した後でマーケット環境は決して良好ではなかった。「顧客先に常駐して開発する派遣ビジネスは、未来がないと思って、やらないと決めていた」ものの、サラリーマン時代に担当していた顧客から信頼されていたおかげで、仕事には困らなかった。それどころか、一人では納品できない量の仕事があり、三上は社員を雇うことを決める。そして、開発者に加えて、営業担当者も招き入れ、ピーク時には20人ほどの企業に成長していた。景気の変動で苦しい時期もあったが、生き残ってきた。だが、リーマン・ショックの衝撃には耐えられなかった。会社はゆっくりと縮小傾向に。社員は徐々に離れていった。（つづく）［文中敬称略］