海外で売れるIT商材の要素として（1）日系企業にしかつくることができない、（2）ゼロからつくるより買ったほうが安くて便利、（3）ブラックボックス化されて模倣が難しい、という3要素を前号で挙げた。

中小参加の土壌も不可欠

　こうした状況を踏まえて、NECや日立製作所、東芝などの大手国産メーカーは、社会インフラ系の大型システムに商機を見出している。エネルギー管理や交通制御、ヘルスケアといった分野に焦点を当てて、果敢に挑戦している。プラントを海外に輸出するような感覚で、ハードウェアの中身をブラックボックス化し、ユーザーは「手渡された鍵を回すだけでシステムが稼働する」という意味の「ターンキー」を目指すものだ。

　ERP（基幹業務システム）に代表される古典的な業務システムは、「レコード（記録）型」と呼ばれ、SMAC（ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウド）など常にデータの流れが変化するようなタイプは「エンゲージメント（適合）型」に分類される。残念ながら現段階でエンゲージメント型は、日系ベンダーの弱い部分で、先頭を行く米国勢の背中はまだ見えないほど遠い。

　レコード型とエンゲージメント型をうまく組み合わせ、さらに日系ベンダーが伝統的に強いハードウェアで包み込むことで、弱点を克服していくことが望まれる。体力のある大手を軸としながらも、中小ベンダーも積極的に参加することで海外ビジネスの盛り上がりにつなげたい。（安藤章司）