苦しくても捨てないプロダクトビジネス

　ソフト開発を行う企業2社での勤務を経験した後、独立してエイチ・ピー・エス（HPS）という会社を設立した三上智親（43歳）。ピーク時には20人ほどの社員を抱える会社になったが、リーマン・ショックの影響などで会社の規模は縮小を余儀なくされ、現在は一人で活動している。独立して約12年、いいときも悪いときもあったが、三上がこの間ずっと念頭に置いていることがある。「顧客の要望に応じてソフトを開発する受託開発モデルは縮小する」。

　独立後、会社を支えてきたのは顧客の要望に合わせてソフトを開発する受託モデルだった。ある程度の規模をもつITベンダーが繁忙期に、一時的に開発リソースを確保する場合、短期的に開発プロジェクトの一部を担うことに慣れている中小規模のソフト開発会社やフリーエンジニアは使いやすい。そんな事情から、比較的安定した需要がある。三上の会社もその例外ではなく、受託型ソフト開発で生き残ってきた。

　ただ、三上は独立直後から受託型ソフト開発事業を手がけながらも、プロダクトビジネスにもチャレンジしてきた。メール配信システムやホスティングサービスを開発・販売するなど、多忙ななかでもメーカーになるという挑戦を諦めてはいない。「ニーズを見越して受け入れられそうな製品を開発し、顧客に提案する。それが競合に勝つために必要だし、私がずっとやりたいと思っているビジネスだ」。

　HPSという会社の代表取締役を務めてはいるものの、今は一人。生計を立てるためには、受託開発は必要だが、プロダクトビジネスに今でもチャレンジしている。今年に入って進めているのが、「連携すれば価値が増す他社製品同士をつなげる」という新コンセプトの製品開発だ。（つづく）［文中敬称略］