予算をどう確保するかに課題は集約される

文部科学省
生涯学習政策局
情報教育課課長
豊嶋基暢 氏 総務省の「フューチャースクール推進事業」、文部科学省の「学びのイノベーション事業」といった事業から、教育現場へのICT普及を阻む壁が何なのかがみえてきた。
課題は、いかに予算を確保するかという点に最終的には集約される。「2020年までに児童・生徒に一人1台情報端末を配備できる環境を整える」という目標を政府が打ち出したが、その前段階の施策はすでにスタートしている。昨年閣議決定された「第2期教育振興基本計画」では、2017年度までに、まずは3.6人に1台のPC、各普通教室に1台の電子黒板などを配備するという目標を掲げている。その達成に向けて、2014年度から2017年度までの4年間で合計6712億円、単年度で1678億円の地方財政措置が講じられている。
しかし、補助金と違って紐つきの財源ではないので、この予算を実際に何に使うかの判断は、各自治体に委ねられる。つまり、本来なら教育ICT化に使うべき予算だが、適正な執行には、自治体の首長や財政部局の理解が必須となる。教育委員会が、予算確保のための折衝に長けているというケースは稀だ。結果、実際の執行額は、地方財政措置分に届いていない。
首長や財政部局にICTの効果を納得してもらう

総務省
情報流通行政局
情報通信利用促進課長
岸本哲哉 氏 文科省も総務省も、実証事業の成果として、教育ICT化の効果やメリットをわかりやすく示し、教員や教育委員会だけでなく、予算執行の意思決定者にも広くPRできる場をつくっていく意向だ。総務省の岸本哲哉・情報流通行政局情報通信利用促進課長は、「教育ICT化は、自治体に丸投げするだけでは進まない。今年度スタートした『先導的教育システム実証事業』では、デジタル教材の流通基盤整備のベースをつくるとともに、ICT活用がもたらすメリットについて、さまざまな場面に応じた具体的な事例をつくっていきたい」と意気込む。
一方、文部科学省の豊嶋基暢・生涯学習政策局情報教育課課長は、「都市部であれば、教育情報化のノウハウを学校外から得るのにそれほど苦労はしないだろうが、地方では、キックオフを実現するためのチャネルが薄いという課題もある」と指摘している。大手も含め、ITベンダーはまだまだ全国の自治体をカバーできていない。予算措置に関する啓発への協力も含め、ITベンダー側にできることは、まだまだたくさんある。(本多和幸)