Google技術に特化したソフト開発会社であるトップゲート(加藤昌樹代表取締役)は、ウェアラブル領域の研究に熱心に取り組んでいる。Google技術者の集団である同社にとって、Googleが開発している腕時計型ウェアラブル端末向けOSの「Android Wear」は避けて通れない中核技術である。Android搭載のスマートフォンとの連携や、省電力型Bluetooth(BLE)通信の応用にビジネスの可能性を見出している。
ただ、新しい技術は、「正直なところ、実際に自分で使ってみないとわからない」(加藤代表取締役)ことから、自ら韓国LGエレクトロニクスの「G Watch」を購入。社内を見渡してみると、とくに示し合わせたわけではないのに、担当の技術者らの腕にも「G Watchが光るようになった」と苦笑する。会社で購入した備品ではないので、技術者個々の思い思いの用途で、この新しいウェアラブル端末の可能性を探っている。

腕時計型ウェアラブル端末と、同端末と連動して動作するスマートフォンを自転車のハンドルに取りつけたイメージ Android技術者の一人である同社の山下武志氏は、趣味のスポーツ自転車に乗るときの心拍数とケイデンス(クランク回転数)を、腕のG Watchや、ハンドルに取りつけたAndroid端末へ転送するアプリケーションを開発した。この通信手段として省電力型BLEを採用している。理論的にはこれでうまくいくはずだったが、実際に使ってみると、直射日光の下では液晶画面が暗すぎてよく見えなかったり、自転車程度の横Gでも加速度センサが反応してしまい、画面を明るくできないなどの諸問題が浮上。「こうした問題点を踏まえてアプリを手直しして、実用に耐えるものに仕上げた」(山下氏)と話す。

加藤昌樹
代表取締役 加藤代表取締役は「ウェアラブルのような新しい領域は、技術者自身が使いこなしてこそ、ユーザーに向けた新しい提案が可能になる」と、趣味と実益を兼ねたさまざまな試行錯誤を技術者らに推奨している。
今後は、例えば、自転車の関連部品を開発するメーカーや眼鏡会社、ゴルフ用品の開発会社などにGoogle技術をベースとした「ウェアラブルを積極的に提案していきたい」(加藤代表取締役)と話す。ウェアラブルの技術は、今後あらゆる製品への応用余地が大きく、異業種ユーザーの製品開発にもAndroid Wearをはじめとするウェアラブルの技術を役立ててもらうよう働きかける。こうした提案のほうがユーザーに喜ばれるし、すでに仕様が決まった開発仕事を同業者間で取引するよりは、「社内の技術者たちの目が何倍も輝いてみえる」(同)と、ウェアラブルで一段とビジネスに弾みをつける考えだ。(安藤章司)