［標的型攻撃］
特定の組織をターゲットに、機密情報などを盗み取るために行われるサイバー攻撃

　特定の政府機関や企業が有する機密情報や知的財産の窃取を目的としたサイバー攻撃のこと。とくに、より高度な手法を用いて持続的に攻撃を繰り返す標的型攻撃を指して「APT（Advanced Persistent Threat）攻撃」と呼ぶこともある。

　標的型攻撃の代表的な攻撃手口としては、（1）攻撃対象の決定、標的の情報収集（2）標的の関係者や、業務にかかわる内容を偽装した「標的型メール」を送信、受信者に添付したマルウェアなどの不正ファイルを開封させ、対象組織内にウイルスを侵入させる（3）組織内でウイルス感染が拡大、重要情報を窃取する というものである。標的型メールは、不特定多数をターゲットにしたウイルスメールとは異なり、個別の標的に特化した攻撃のため、汎用的なセキュリティ対策では防御が難しい。

　近年とくに注目を集めた標的型攻撃による出来事といえば、2015年6月に発覚した、日本年金機構の情報流出問題がある。同機構によると、約125万件（2015年6月発表時点）の個人情報が流出したおそれがあるという。この出来事によって、同機構の対応の遅れや情報共有の甘さなどが指摘されるに至った。標的型攻撃が日常的に行われているいま、組織へのウイルス侵入防止対策だけでなく、万一セキュリティインシデントが発生した場合を想定した、被害を最小限に食い止めるための対策やマニュアルの作成が重要である。（前田幸慧）

［CSIRT］
コンピュータやネットワーク上のセキュリティインシデントに対応するチーム。企業や政府機関などの組織内に設置する

　CSIRT（Computer Security Incident Response Team、シーサート）とは、情報セキュリティ対策即応チームのこと。企業などの組織内にセキュリティの専門家集団を設置して、コンピュータやネットワーク上で発生したセキュリティインシデントへの対処を行う。

　具体的には、組織内外でのセキュリティインシデントに関する情報の収集・分析や、組織内部でセキュリティ問題が発生していないかの監視を行う。セキュリティ上何らかの問題が発生したときには、原因究明や状況把握、対策の実行などを行い、被害を最小限に食い止める。

　1988年に設立された、米国カーネギーメロン大学にある「CERT Coordination Center（CERT/CC）」がCSIRTの先駆けであるといわれている。国内の代表的なCSIRTには、「JPCERTコーディネーションセンター（JPCERT/CC）」があり、情報セキュリティ関連の情報収集・発信などを行っている。CSIRTの国際的な連合体としては、FIRST（Forum of Incident Response and Security Teams）がある。

　近年、標的型攻撃をはじめとするセキュリティ問題への関心の高まりを背景に、CSIRTを設置する企業が増えてきている。攻撃手口の巧妙化を背景に、CSIRT間の情報共有と緊密な連携を目的に、2007年に発足した「日本シーサート協議会」には、2015年11月2日現在で103チームが加盟している。（前田幸慧）