［専用線］
ユーザーが通信事業者から借り受けて、特定の拠点間を1対1で結ぶ専用回線

　専用線は、特定の拠点と拠点とをネットワークで結ぶ接続回線のこと。企業などが通信事業者から接続回線を借り受け、自社専用の回線として他拠点とセキュアで安定した通信を行うために利用する。専用線の歴史は古く、日本では、110年前の1906年に最初の専用線サービスが始まったとされている。

　専用線を用いると、不特定多数の利用者と通信回線を共有する公衆回線とは対照的に、回線を自社で完全に占有できるため、他者の通信の影響を受けることなく、いつでも安定した通信帯域を確保できる。また、盗聴などの危険性が少なく、安全に通信できることが大きな特徴である。

　公衆回線が使えなくなるような非常時においても、確実に通信を行うことができる、通信内容のセキュリティを確保できるため、専用線を利用するユーザーも多数ある。官公庁や鉄道会社、放送局、金融機関などは専用線を引いている場合が多い。

　専用線の契約体系は、通信速度や拠点間の距離に応じた月額固定料金制が一般的である。専用線で結ぶ拠点間の距離が長ければ長いほど、回線にかかるコストは高額になる。そのため、専用線では安定・安全なネットワークを利用できる一方で、回線の敷設や運用に、多額の費用が必要となり、民間企業では現実的に大企業しか導入が難しかった。こうしたコストを削減するために生み出されたのが「VPN」だ。（文／前田幸慧）

［VPN］
インターネットなどの公衆ネットワーク上で仮想的な専用ネットワークを構築するための技術、サービスのこと

　VPN（Virtual Private Network）は、インターネットなどの公衆ネットワーク上にプライベートネットワークを構築するための技術、また、ネットワークを利用者に提供するサービスのこと。日本語では「仮想専用線」「仮想プライベートネットワーク」などと呼ばれる。企業の拠点間のネットワーク接続や、企業内部のネットワークを外から安全に接続するためなどに利用される。

　VPNのサービス提供が始まるまでは、専用線が企業内ネットワークの利用において一般的だった。しかし、専用線は安全だが、多額のコストを必要とすることが課題。一方で、インターネットのような公衆ネットワークは安価に利用できるが、盗聴や改ざんなどの危険性があり、安全性は保障できない。そこで、トンネリングや暗号化などの技術を駆使して、公衆ネットワーク上に仮想的な専用ネットワークを構築し、他のユーザーも利用しているネットワークをあたかも専用線のように利用できるようにしたのがVPNだ。ネットワークの信頼性では専用線に劣るが、通常のインターネットを使うため、導入・運用にかかるコストは距離に依存せず、専用線よりも安く利用できる。

　VPNは大きく分けて2種類ある。一つは、「IPーVPN」と呼ばれる通信事業者が保有する閉じたネットワークを利用するタイプ。もう一つは、「インターネットVPN」と呼ばれる一般的なインターネット上にプライベートネットワークを設けるタイプ。現在では、VPNの利用において後者が主流となっている。（文／前田幸慧）