日本アドバンストリーダーズソフトウェア（NALソフトウェア）は愛知県名古屋市に本社を構える。今のビジネスは、名古屋を中心に受託開発や人材派遣などがメインだが、ビジネスを手がける対象地域を増やそうとしている。これまでのビジネスをベースにアウトソーシングサービスという新たな領域に着手しながら、東京支社をアンテナ拠点に据えて新鮮な情報を収集し、全国展開、そして海外への進出を視野に入れている。

工場の生産管理からFAまで開発

　NALソフトウェアは、これまで大手メーカーの下請けを中心に製造業向けシステム開発・構築を主力ビジネスに据えていた。この受託開発のノウハウを生かして、生産を効率化しながら需要予測や供給計画を立てることが可能な製造業向け生販統合管理パッケージ「NK-PRISM」を開発し提供している。このパッケージでも、堅調にユーザー企業を増やしている。

　昨年は、工場の生産管理からFA（Factory Automation）までを一気通貫させたシステムの開発案件を受託した。FAのデータを連携させて生産管理を実現するものだ。工場内の空調など設備や搬送状況などのデータも収集・分析することができ、工場の可視化に大きく寄与している。柴田隆昌社長は、「無人の生産も実現しており、コスト削減にもつながったとの評価を受けた」と自信をみせる。

　ただ、受託開発のプロジェクトは波が激しい。この案件によって昨年度（2015年9月期）は売上高が大きく伸びたが、「今年度は半分程度」と柴田社長は打ち明ける。しかも、プロジェクトが長く続くことを期待して人材を増やした場合、プロジェクトの終了後に他の案件が獲得できなければ人件費がかさむことになる。「このような状況を打破するため、新しい領域に踏み込まなければならない」（柴田社長）と、システム構築やソフトウェア開発に加えて新ビジネスに着手することを決断した。

運用の発展系で複数ユーザーを獲得

　受託開発でユーザー企業を訪れているうちに築かれたのは信頼関係だった。システム導入後、ユーザー企業は必ずといっていいほどNALソフトウェアにシステム保守に加えて運用を依頼していたからだ。柴田社長は、「システム運用のアウトソーシングサービスにニーズがある」と判断。まずは、受託開発でシステムを構築した企業を中心にサービスを提案したところ、「多くの顧客を獲得した」と満足そうに話す。また、アウトソーシングによって、ユーザー企業の状況がわかって、課題を解決するためにNK-PRISMを提案したり、システム全体のリプレース案件を獲得することにもつながった。「アウトソーシングから入って、新規顧客の開拓にも成功した」と自信をみせる。

　システム全体のリプレース案件の獲得によって、次のビジネスにつながる一つとして、自社製品・サービスの拡充が挙げられる。すでに提供しているNK-PRISMは受託開発の経験を積んだことで製品化したものだ。「同じような導入事例がいくつかあった場合、それをパッケージ化することも検討している」という。

全国展開と海外進出を視野に

　NALソフトウェアは、アウトソーシングサービスによって下請けから脱却することになったわけだが、大手ベンダーとのパートナーシップがなくなったわけではない。「（取引先の）大手ベンダーとは、しっかりと顧客層を棲み分けてビジネスを手がけている。もちろん、請け負いは捨てているわけではない」（柴田社長）としている。下請け、アウトソーシング、製品の拡充という3本の柱をもったNALソフトウェアが、次のステップとして見据えているのは、全国網でのビジネス展開だ。製品・サービスをもつ各地域のSIerやソフト開発事業者とパートナーシップを組んで拡販していくことを模索している。すでに、一つの地域でNK-PRISMを販売するパートナーが出てきているようだ。

　柴田社長は、「パートナーの製品・サービスを担いで当社の製品と組み合わせて名古屋で提供していくというモデルもつくっていきたい」との考えを示している。各地域で有力なSIerやソフト開発事業者が協業して、ユーザー企業のニーズをソリューション化して提供するという環境が整ってくれば、そのソリューションがさまざまな地域に広がる可能性を秘めている。柴田社長は、「将来的に海外進出することを視野に入れてビジネスを手がけていく」という。そのため、情報が集まる東京支社をアンテナ拠点に、さまざまな製品・サービスを開発する環境も整えようとしている。