自社開発の「墓地管理システム」を中心にパッケージシステムの開発に注力しているアクティブクリエイト。墓地管理というニッチな分野とはいえ、寺ごとに多様なニーズがあるため、カスタマイズが収益源の一つとなり、経営に貢献している。パッケージシステムの開発に注力しているとはいえ、アクティブクリエイトの主力事業は受託開発。売り上げの約7割を占めている。現在は多くの開発案件を抱えていて、その多くが首都圏の顧客。山形で自立することを目標に、パッケージシステムの開発や県内IT市場の開拓に注力している。(取材・文/本多和幸)
Company Data
会社名 アクティブクリエイト
所在地 山形県山形市
資本金 1000万円
設立 2003年6月
社員数 15人
事業概要 パッケージ開発・販売、受託開発、SES
URL:http://www.actcrt.jp/
山形でニアショア開発
伊藤 強
代表取締役
アクティブクリエイトは、エンジニアが客先に常駐するSES(System Engineering Service)で事業をスタートした。その後、本社を置く山形で開発ができる体制を目指し、徐々に受託開発にシフトしてきている。
「現在は受託開発をメインに考えていて、SESは最小限にしている。案件の多くが首都圏であることから、山形の会社でありながら、社員が県内にいない状況になる。それでは、当社の社員でいる理由がなくなってしまう」と、アクティブクリエイトの伊藤強代表取締役は受託開発にシフトした理由を語る。
とはいえ、山形県内には開発案件が少なく、首都圏へのアクセスも決してよくないため、山形のIT企業が案件を獲得するのは容易ではない。伊藤代表取締役は、「よく、山形でやっている」と感心されるという。
アクティブクリエイトでは、ブリッジSEとして同社のエンジニアがシステム開発の設計に加わり、その後の開発の一部を山形にもち帰るというスタンスで受託開発を獲得してきている。受託開発の7割近くは首都圏の案件で、まさにニアショア開発である。
自社パッケージにシフト
受託開発が事業の柱となっているアクティブクリエイトだが、将来的にはパッケージシステムのメーカーになることを目指している。
「受託開発は、開発が終了すれば、契約も終了する。永遠には続かない。次をどうするかを常に考えなければならない。経営の観点からは、ものすごく怖い」と伊藤代表取締役。自社パッケージをもつことで、案件をコントロールしたいとの思惑がある。カスタマイズや保守費用などが発生するため、ストックビジネスとしての期待も大きい。
製造業、物流関連、販売管理などの自社パッケージシステムをもつアクティブクリエイトだが、現在は墓地管理システムに注力している。ニッチな分野で競合が少ないことから、引き合いも多いという。「墓地管理システムは、お墓参りのタイミングを檀家にお知らせしたり、住職の法話を載せたりするなど、お寺の情報発信に活用できる。また、CAD機能を搭載しているのが特徴で、地図を自作できるようになっている」とのこと。山形発のパッケージシステムとして、全国に展開している。
受託開発からパッケージシステムにシフトする理由として、エンジニア確保の問題もある。受託開発はエンジニアの数で売り上げが変わるからだ。
「どこもエンジニアが不足しているため、他社に引き抜かれてしまうこともある。待遇面では、大手に勝てない」。同社ではヘッドハンティングによりエンジニアが引き抜かれ、売り上げを大きく落としたこともあるという。簡単には補強できないため、そのときは「経費削減で乗り切った」と、伊藤代表取締役は当時を振り返る。
IoTの進展で農業ITに期待
伊藤代表取締役は、新たな進出分野として農業ITに期待している。「山形は田畑が多い。山形で情報産業を成長させていくには、農業ITが重要となるのは間違いない。むしろ、農業ITが浸透しないと、山形の情報産業は厳しい」。なかでも、IoTに対する期待は大きく、産学官による実証実験などの取り組みも始まっているという。
とはいえ、現状では自営の農家がITを活用するにはまだまだハードルが高い。IT投資やIT活用ができるのは、農業法人などの組織に限定されるのが現状だ。山形は自営の農家がほとんど。この状況をどう打破するのか。パッケージ戦略との融合なども視野に入れ、アクティブクリエイトはさまざまな取り組みを進めていく。