米アマゾン・ドット・コムの創業者であるジェフ・ベゾス氏が、創業日である7月5日付でCEOを退任し、取締役会長に立場を移した。今月中には宇宙に旅立つという。世界中で消費の形を一変させたカリスマ起業家であり、法人向けIT市場にもクラウドの一大革命をもたらした。時代の転換点の只中にあることを意識せざるを得ない出来事だ。

 従来の資本主義の枠組みの曲がり角を象徴する存在とも言えるGAFAの中で、創業者が経営の手綱を握るのは米フェイスブックのみになった。

 ベゾス氏の後任に就いたのはAWSのCEOだったアンディ・ジャシー氏。年次イベントである「AWS re:Invent」は2020年からオンラインにシフトしているが、19年以前は開催地の米ラスベガスでジャシー氏のメッセージを生で聞く機会があった。強烈なキャラクターを持つ競合ベンダーのトップがAWS批判を展開する姿などを見慣れたせいか、壇上に立つ姿に些か地味な印象を抱いたこともあったが、クラウド市場のトップベンダーかつ牽引役としての揺るぎない自信と成長への意思を感じた。

 近年のジャシー氏のプレゼンではDXに触れることも多かった。「DXとはテクノロジーではなく経営のリーダーシップの問題だ」と何度も繰り返し発信してきたのは印象深い。DXとは本来、テクノロジー活用を前提としつつ、適宜ビジネスモデルや組織、企業文化までをも継続的に変革し、競争上の優位性を維持し続けることを指す。その意味でアマゾンもDXに取り組み続ける必要があるわけで、自身の問題提起にジャシー氏はどう向き合うだろうか。ディスラプターとして社会を変えた企業のカリスマ創業者が経営の一線を退いた後、後継者は次のフェーズの成長をどう定義して経営にあたるのか、一つのモデルケースになることを期待したい。

 成長する企業に共通の傾向として、業種業界を問わず経営とテクノロジーの距離がどんどん近づいている。視点を変えると、テック系企業であっても両者の間が近いとは限らない。国内市場では大手ITベンダーがようやくそうした状況を深刻に受け止め、自身のDXに本腰を入れ始めた段階だ。経産省が発表した「DX銘柄2021」でグランプリ企業に選ばれた日立製作所の新社長に、Lumada事業立ち上げの中心人物の一人である小島啓二氏が就いたのも象徴的な動きと言えそうだ。

 
週刊BCN 編集長 本多 和幸
本多 和幸(ほんだ かずゆき)
 1979年6月生まれ。山形県酒田市出身。2003年、早稲田大学第一文学部文学科中国文学専修卒業。同年、水インフラの専門紙である水道産業新聞社に入社。中央官庁担当記者、産業界担当キャップなどを経て、13年、BCNに。業務アプリケーション領域を中心に担当。18年1月より現職。