京都電子計算は、10月に創業60周年を迎えた京都を代表するITベンダーだ。公共と文教を中心に事業を展開し、多くの自治体や大学にシステムを導入してきた。現在は、さらなる成長を遂げるべく、自社のクラウドサービスの拡充など新たな強みの創出を目指している。
(取材・文/岩田晃久)
ネット出願システムで高シェア
――会社の紹介を。
当社は1964年10月、京都府と滋賀県の最初の計算センターとして創業し、今年で60周年を迎えた。現在は、売り上げの7割弱を占める公共分野と、大学を中心とした文教分野の二つがメインの事業領域となっている。
――顧客層を教えてほしい。
公共分野では、地場のお客様に加えて、早い段階から全国展開している。全国には、当社と同じ計算センターやIT企業があるため、そういった企業と連携して、多くの自治体に当社が開発したシステムを導入している。
京都府は大学が多いため、入試業務や教務事務システムなどを長く手掛けてきた。10年くらい前から、大学のインターネット出願が始まったことを機に、インターネット出願システム「Post@net」をクラウドサービスとして提供している。地元の大学に加えて、全国の大学での利用も増加しており、高いシェアを誇っている。
民需の面では、長く付き合いのあるお客様が中心で、これまでは積極的には営業をしていなかった。しかし最近は、インフラやセキュリティーの重要性が増していることから、今後は、業界業種問わずに営業活動をしていこうと考えている。
ノウハウを生かした製品づくり
――顧客のDXへの取り組みは進んでいるのか。
大学のDXでは、教育、研究、運営業務のうち、当社は運営業務のお手伝いしている。かなりDXが進んでいる大学もあるが、地方の大学などでは、DXの前のデジタイゼーション、デジタライゼーションに取り組んでいるケースが多い。Post@netをはじめ、さまざまなソリューションをクロスセル、アップセルすることで、お客様の運営業務の効率化を支援していきたい。また、複数の大学や、大学と高校が集まった団体に対し、1社でサービスを展開できる事業者を求める声が出てきているので、そうしたニーズに対応できるようしたい。
森口健吾 代表取締役社長
大学では、少子化によって受験生が集まっている大学と、苦戦している大学の二極化が進んでいる。中小規模の大学では、IT投資の前に、受験生の確保のための広報活動や、魅力的な大学づくりに予算を掛ける傾向がある。これからさらに少子化が進むため、例えば、社会人になったばかりの人に向けたサービスを展開するなど、市場を広げていくことが重要だと感じている。
――自社製品を積極的に展開する理由は。
創業時からお客様のさまざまな要望に応えてきたことから、社内には何でもつくりたいという文化がある。そして、公共と文教の二つの軸で事業展開してきたため、、社内には豊富なノウハウが蓄積している。そうした強みを生かした製品をつくり、使っていただくほうがお客様にとってはいいのではないかという考えが根底にある。
自治体と協力して開発した生成AIを組み込んだ答弁生成支援サービスの提供を5月に開始した。業務の中で自然に生成AIを使えるようになることが支持され、予算化して利用したいという声が多く届いている。これからも公共、文教問わずに新しい製品をつくり事業を発展させる。
公共と文教の売り上げを同等に
――人材確保の取り組みは。
新卒採用は、手厚くやらないと応募者が集まってこない状況が進んでおり、採用コストが増加している。難しい状況だが、毎年、目標を達成できるように取り組んでいる。IT企業だけでなく、全ての業種がIT人材を必要としており、中途で即戦力を採用するのは厳しいので、引き続き新卒採用と育成に力を入れていく。
――今後の展望を。
営業面では、マーケティングやインサイドセールに力を入れるため、必要なスキルを取得し、効率的に営業活動ができる新しい体制を確立することを目指す。
公共は法改正への対応などを着々と進める仕事の比重が高まっていくとみている。会社をより成長させるには、これまで以上に、文教に注力していく必要がある。社員のアイデアにより、さまざまな製品やサービスをつくれているので、この流れをさらに加速させて、公共と文教の売り上げを同等にしたい。
当社は、お客様の課題を捉えてITで解決していくアプローチを強みとしており、この部分は今後も変わらずに取り組む。一方で、一からヒアリングしてシステムを開発するといった大規模な開発案件は、IT市場全体で減少しているため、当社のビジネスもシフトチェンジしていかなければならない時期になっている。この面では、市場や社会情勢の動きから仮説を立て、必要とされる製品やサービスを提供できるようにしていく。
Company Information
1964年10月設立。パッケージシステムの開発・販売、システム構築、導入・運用支援サービス、公共、文教向けのクラウドサービスの提供などを手掛ける。2024年4月1日現在の従業員数は312人。