ハイテックシステムは、山形県を中心とした東北地方でセキュリティー事業を展開している。自前のSOC(セキュリティーオペレーションセンター)とNOC(ネットワークオペレーションセンター)を持ち、顧客のシステム環境を一気通貫で支援しているのが特徴。地方の中小企業もサイバー攻撃の標的となる中、地元のIT企業として取り組みを進める意義などを聞いた。
(取材・文/堀 茜)
自前のSOCとNOCを運営
──事業内容の紹介を。
中小企業をターゲットにセキュリティー事業を行っている。地方では地元の企業が自前でSOCを持っているケースはまれだが、当社は中小企業のセキュリティーレベルを上げるため、2019年にSOCを立ち上げた。ゲートウェイからエンドポイントまで、一気通貫でシステムの運用監視を支援している。NOCもあり、ネットワークのサービスも行っている。補助金や保険などを組み合わせて、中小企業がより導入しやすいパッケージでサービスを提供している。
──顧客の特徴は。
社員5人以下の企業から、1万台以上のPCを使う大学などの教育機関まで、顧客の規模は幅広い。24年5月時点で、顧客の46%が社員数100人以下だ。山形県内が6、7割を占めるが、東北地方の他県や北海道の顧客もおり、金融や文教マーケットが中心になっている。エンドポイント向けでは、フィンランドWithSecure(ウィズセキュア)製品を取り扱っている。EDR(Endpoint Detection and Response)を1ライセンスから導入できる点が顧客のニーズに合致しており、コストメリットは大きい。
黒子としてワンストップで対応
──中小企業向けのセキュリティーで特徴的なニーズは。
中小企業は、情報システム部門がなく、総務など、ほかの業務と兼ねているケースがほとんどだ。国内企業の99%以上が中小企業で、働く人の約70%がそこに在籍しており、セキュリティーを高めることは重要だが、運用に負担のかからないかたちが求められている。
ハイテックシステム 土屋 浩 代表取締役
一番の課題はコストだ。社員の雇用を守る中で、セキュリティーにかけるお金を捻出するのは中小には大きな課題だ。当社はリーズナブルで高いレベルのサービスを提供したいとの思いでセキュリティー事業のブランド「Total Security Operation Center(TSOC)」を始めた。予算や人的リソースが限られる中小企業向けに、UTMログ管理、エンドポイントの強化、運用監視の外部委託の三つをセットで提案している。当社がセキュリティー関連をワンストップで対応することで、内容によって問い合わせ先を変える必要がなく、顧客の負担軽減につながっている。
──課題は。
セキュリティー製品を入れていても、管理や監視をしておらず、被害が出るまで気付かないことがある。製品を入れて終わりではなく、活用するために監視をセットにしないと、リスクに対応するのは厳しい。当社にアウトソースしていただいて、業務負荷が増えないかたちで安全性を担保することを勧めている。
──中小企業のセキュリティー意識は。
当社の調査で、社員5人以下の企業がVPNに対して月3万件以上の攻撃を受けたというデータがある。サプライチェーンを狙った攻撃が激しくなっており、地方でも製造業を中心に、対策の強化に向けて少しずつ意識は変わってきている。
──DXの機運は高まっているか。
顧客から「DXに取り組みたいが何からやったらいいだろうか」と相談を受ける場合がある。DXが進むのは当社にとって追い風だ。企業の情報がデジタル化すればするほど、セキュリティーの重要性は高まる。顧客には、DXとセキュリティーを切り離さないでくださいと話している。業務改革を進めると、必要なセキュリティー体制も変わる。セキュリティー全体のコンサルティング的なサポートを含め、黒子として顧客を支えていきたい。
雇用を生み地元に貢献
──人材確保にはどう取り組んでいるか。
当社は中途採用ではなく、新卒採用で人材を育てる方針を取っている。「先心後技」という理念で、当社の考え方に共感する人に仲間になってもらい、専門知識や技術は後からOJTで覚えてもらっている。
山形市でSOCを運営している意味の一つとして、山形で仕事ができる環境を整え、雇用を生み、地元に貢献したいという思いがある。TSOCのTには、東北という意味も込めている。東北各県は将来的な人口減少率が軒並み高い。地方が元気になる一助になればと考えている。
──今後の経営方針は。
セキュリティーに関して高い専門性を持って一気通貫でサービスを提供し、当社にしかできない付加価値の高い仕事で差別化していく方針はぶれずに続けていく。山形を含む東北地方は、PRがあまり得意ではない気質だと感じるが、今後は情報発信やブランディングに力を入れていく。セミナーを自社で企画したり、若手社員がSNSで情報発信したりと、地道なところから少しずつ取り組み、身の丈に合った規模でビジネスを大きくしていきたい。
Company Information
1991年創業。山形県を中心とした東北地方と北海道で、「Total Security Operation Center」のブランド名でセキュリティー事業を展開する。山形市の本社のほか、仙台市と札幌市に拠点を持つ。従業員数は27人(2024年8月現在)。