本店を置く大分市から全国を舞台に事業を展開するオーイーシーは、変革に向けて動き出している。これまでの開発、納品、運用を中心とするビジネスだけでは、変化の動きから取り残されてしまうとの危機感があるからだ。既にAIなどの先端技術を活用した取り組みを進めており、加藤健社長は「社会にどっしりと根を張り、デジタルの力でさまざまな課題の解決に貢献したい」と意気込んでいる。
(取材・文/齋藤秀平)
全国の自治体から評価
――直近の会社の状況は。
当社は1966年に設立し、これまでソフトウェアやシステムの開発、納品、運用のビジネスを主体としてきた。特に売り上げの割合が大きいのは自治体向けビジネスで、全体の約6割を占めている。自社開発した公共施設予約システム「eG-Reserve」や公共住宅管理システム「eG-Tops」といった製品を提供し、全国の自治体に採用されている。導入実績は、都道府県が21、政令市が9、特別区が9、市町村が175の計214自治体となっている。
――多くの自治体から支持されているのはなぜか。
社員が顧客に対して真面目で誠実な姿勢が評価されている。例えば、製品やサービスには、顧客から聞き取ったニーズをしっかり反映するようにしており、こうした細かい対応ができるのは当社の強みだ。それに加え、長年にわたって自治体向けビジネスを展開することで培った豊富なノウハウも大きな武器になっている。
――自治体は標準準拠システムへの移行を控えている。
当社のビジネスにとっては大きなインパクトがあるとみている。政府の方針がどうなるかによるが、現在の期限となっている2025年度末までの移行が進んだ場合、同年度の売上高と営業利益はともに増加すると予測している。ただ、移行が完了した後は、当社が持っているデータセンターでのシステム運用が中央に持っていかれる。今後は標準化されたデータを活用した新しいサービスが重要になるとみているので、そこに向けてチャレンジしていかなければならない。
新しい価値を生み出す
――社会の変化にはどのように対応しているか。
昨今は世界的に環境破壊や災害が起こっているほか、国内では少子高齢化が進んでいる。こうした社会課題の解決に取り組んでいかなければ、地域の企業として存続できないと考えている。そのため「テクノロジーと人間力で、ウェルビーイングな社会を実現する」「すべての『地域』に寄り添う共創デザインカンパニーになる」といった方向に向けてコーポレートアイデンティティーを見直し、今までの取り組みにプラスアルファして新しい価値を生み出すビジネスモデルを目指している。
代表取締役社長 加藤 健
――価値の創造に向けた具体的な動きを教えてほしい。
特に注力しているのはAIの領域だ。具体的には、独自AIを搭載した遺失物管理システム「pickture」や、AI技術を用いた駐車場利用状況管理システム「aki-doco」といった製品を提供しており、今後はバリエーションの拡大を目指す。社内では、システム開発へのAI活用に注目していて、既に情報収集や研究を進めている。AIの領域に加え、社会的に関心が高まっている環境領域では、CO2排出量管理クラウドサービス「carbonote」を提供し、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む各企業を支援している。
――課題は。
人手不足が大きな課題だ。ありがたいことにデジタル化やDXに向けてニーズが高まり、いろいろなことをお願いしたいとの話は多くある。ただ、人材不足を理由にお断りしなければならない状況が起こっている。さらに、生成AIをはじめ、開発などに用いる技術はどんどん変わっており、そうした新しい技術を習得した人材をそろえることが必要になっている。今後の成長のためには、人材の確保と育成がかぎになる。
「100年企業」を目指す
――自治体や企業のIT活用の見通しは。
企業や自治体が、それぞれでシステムを抱えて使うような時代は終わりつつある。今後は標準的なシステムをコスト削減しながら有効に使い、データをしっかりと利活用していく流れになっていくだろう。そうなった場合、社会的なニーズに対応していかなければ、景況感が良くても当事者になれず、市場での競争から取り残されることになると考えている。
――今後に向けた抱負を。
当社は26年に設立60周年を迎える。簡単な話ではないのは承知しているが、しっかりと成長を継続して「100年企業」を目指したい。私が知っている100年企業は、歴史と伝統に基づくどっしりとした基盤の上で発展しているので、当社もそうした基盤をしっかり固めていく。これからは、今までとは違った変化の激しさがあると思うが、それでも揺るがないような会社にする。社会にしっかりと根を張り、デジタルの力で課題解決に貢献し、「オーイーシーに頼んだらしっかりやってくれる」と、より信頼してもらえるようになればいいと思っている。
Company Information
1966年4月、大分電子計算センターとして設立。ソフトウェア開発やAI・IoT活用支援などのサービスを手掛ける。本店の大分市と東京の2本社体制とし、福岡、佐賀、京都、高松、富山、福井の各市にも拠点を置く。2024年4月1日現在の社員数は574人。