視点

共助を支えるゼブラ企業

2025/01/29 09:00

週刊BCN 2025年01月27日vol.2045掲載

 私は中小企業庁の令和6年度「地域の社会課題解決企業支援のためのエコシステム構築実証事業」に参加しており、鹿児島県を実証地域とした取り組みに関わっている。

 この事業では、ビジネスを通じて地域課題の解決を図り、多様な関係者と協業しながら新たな価値を創造し、革新的な技術やサービスを活用して社会的インパクトを生み出す企業が注目されている。このような企業は「ローカル・ゼブラ企業」と呼ばれる。ローカル・ゼブラという概念は2017年に米国で提唱されたもので、社会性(白)と経済性(黒)の両面を兼ね備えた姿をシマウマ(ゼブラ)の模様に例えたものである。群れをなして行動することで、持続可能性と協力の象徴ともなっている。

 地域では、社会課題を解決しようと仲間が集まり、手弁当で活動を始めるケースが少なくない。しかし、活動が2年、3年と続くうちに経費負担が課題となり、せっかく始めた取り組みが頓挫してしまうこともある。地域で経済性を維持しながら、持続可能なエコシステムを構築するにはどのような仕組みが必要か。この課題に取り組むべく、全国で20件の実証実験が同時にスタートしている。

 鹿児島県の取り組みでは、システム思考を用いて地域社会のメカニズムをループ図に描き出し、変革のビジョンを策定する作業を進めている。そのビジョンをもとに変革を実現するプロセスをデザインする試みを、全国から集まったメンバーと共に行っている。

 この事業の大きな特徴は、採択された20の事業が情報を連携し合い、互いの活動現場を訪問して課題を共有している点である。このような場の創出は、国が主導する事業ならではの取り組みといえる。年度末に向けて、20件の事業の成果がまとめられる予定である。成果は中小企業庁の「地域課題解決事業推進(ゼブラ企業)」のページでも公開される予定であるので、ぜひ参照し、自地域での活動に役立てていただきたい。

 これからの人口減少社会において、集落や自治会など地域コミュニティーを基盤とした共助の役割はますます重要となる。その中で、地域コミュニティーと共に歩むゼブラ企業が多く誕生し、活躍していくことを期待している。そして、その実現にはデジタル技術の力が不可欠である。

 
サイバー大学 IT総合学部教授 勝 眞一郎
勝 眞一郎(かつ しんいちろう)
 1964年2月生まれ。奄美大島出身。98年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年、ヤンマー入社、情報システム、経営企画、物流管理、開発設計など製造業全般を担当。2007年よりサイバー大学IT総合学部准教授、12年より現職。総務省地域情報化アドバイザー、鹿児島県DX推進アドバイザー。「カレーで学ぶプロジェクトマネジメント」(デザインエッグ社)などの著書がある。
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