視点

AI社会こそACCSと協働を

2025/08/06 09:00

週刊BCN 2025年08月04日vol.2070掲載

 2024年11月、「AI技術の進歩と、著作権における“現状を理解”~生成AIと声~」と題したパネルディスカッションをコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)主催で開催した。人の声がAIによって勝手に利用される事例は、特に声優たちにとって死活問題であり、彼ら自身も問題提起を続けている。現行の著作権法で声を保護するのは難しいが、こうした問題を受けて、声をデータベース化。権利を確立し、声の無断使用対策と適切な対価還元システムまで含むビジネスモデル特許取得に向けて、弁理士、法務担当者などの有志で研究会を開いている。

 ACCSは、著作権法に立脚した権利保護活動を行っている団体だと認識されていると思う。ただ、昨今は著作権法だけでなく、商標法や不正競争防止法など、侵害事例に応じて会員会社の権利を守るための活動を行っている。

 例えば、奈良県警察が25年1月、偽造トレーディングカードを販売していた大阪市の会社員男性を逮捕した事件は商標法違反容疑だった。高知県警察が24年4月に、「Nintendo Switch」用ゲームソフトのセーブデータの改造代行をしていた京都府の男性を逮捕したのは不正競争防止法違反容疑だ。いずれもACCSが調査に協力した。

 社会における著作権への理解はずいぶんと進んだと思う。だからと言って、ACCSの存在意義が弱まったわけではない。時代に合わせて頻繁に改正される著作権法について、政府の審議会などで意見を伝えることは、ソフトウェア業界の利益のために重要なことだし、情報社会の安全・安心のためにも著作権教育は継続し続ける必要がある。

 情報倫理の醸成や秩序維持など公益的な視点から、多くの企業に会員として参画して協働してもらいたいが、こうした業界全体の利益のための活動には理解が得られにくい。

 そこで、この6月に開催した定時総会において、新たに準会員制度の創設が決まった。ACCSの年会費は企業規模に応じて20~50万円まで4段階あるが、入会金をなくし年会費20万円だけで会員になれる制度である。翌々年には正会員か賛助会員への資格変更が条件だが、一定期間入会してもらいACCSの取り組みへの理解を深めてもらうことが目的である。

 ACCSを通して会員企業の知見を社会に届けることもできる。ぜひ、新制度を利用した入会を検討いただきたい。

 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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