英Sophos(ソフォス)は2月、米Secureworks(セキュアワークス)の買収を完了した。製品ポートフォリオの拡大米Cisco Systems(シスコシステムズ)は1月25日から新たなパートナープログラム「Cisco 360 Partner Program(Cisco 360)」を開始した。独自の評価指標を用いて、売上高だけではなく顧客への貢献度や支援体制を重視するなど、従来のパートナープログラムから大きな変更を行い、より顧客に対して「価値」を届けられる仕組みを構築した。Cisco 360を中心にシスコのパートナービジネスの戦略に迫る。(岩田晃久)
25年ぶりに刷新
従来のパートナープログラムは25年前につくられたもので、当時主体としていたハードウェアの販売に合わせた内容だった。以降、そのプログラムを改変しながら運用してきた。今回パートナープログラムを刷新したことについて、日本法人執行役員の吉井彩乃・パートナー事業統括はシスコの事業構造と収益構造の変化を挙げる。「シスコのグローバルビジネスの50%以上がサブスクリプションの売り上げになっている。加えて、インフラを構築し、そこにアプリケーションを乗せて運用していくという提案や、AIやセキュリティーといった市場のニーズに応えていかなければならない。そうした変化に対応していくためにパートナープログラムを変更した」と経緯を述べる。
「Value Index」でスコアリング
Cisco 360は、「Value Index」という指標でパートナーをスコアリングする仕組みを採用したのが特徴だ。「Foundational(基礎)」「Capabilities(能力)」「Performance(実績)」「Engagement(エンゲージメント)」の4項目について0~10の値でスコア化し、そこから算出されたValue Indexが5.0以上の場合は「Cisco Certified Partner」、7.5以上の場合は「Cisco Preferred Partner」に認定。パートナーは高いリベートをはじめ充実したサポートを受けることが可能になり、収益性を高められる。新規のパートナーに対する支援策も別に設けており、複数の施策をまとめた「ウェルカムパッケージ」を用意している。
従来のパートナープログラムでは、売上高が小さいと高い認定を受けることができなかったのに対し、Cisco 360では複数の角度から評価されるのが大きな変更点となる。製品を導入してから価値を出すまでの顧客支援や、アップセルができるパートナーがよりメリットを得られる状態になった。つまり、ビジネス規模が小さくても、資格取得や技術力の向上、カスタマーサクセスなどに力を入れることで、一定の評価を得られる。
シスコも製品ポートフォリオが拡大していることから、「ネットワーク」「セキュリティー」「クラウド&AI」「コラボレーション」「サービス」「Splunk」「Mass-Scale Infrastructure」の七つの領域それぞれにValue Indexでの評価を行う。パートナーは専門性を高めることが可能になり、ユーザーにとってはパートナーの得意とする領域が把握しやすくなる。各領域での専門性を高めることで、高度に製品を組み合わせた提案ができるようになる。
24年にシスコが買収した米Splunk(スプランク)が組み込まれたのも注目すべきポイントとなる。吉井執行役員は「シスコ製品とスプランク製品を組み合わせて売りたいという声は多い」と語る。
吉井彩乃・執行役員
日本法人はCisco 360に移行するため準備に1年以上をかけ、情報開示や既存パートナーとのディスカッション、ディストリビューターとの連携強化などを進めてきた。既にCisco Preferred Partnerの認定を得ているパートナーも少なくないという。
「スケールビジネス」を強化
中堅・中小企業を対象とした「スケールビジネス」の推進にも注力する。シスコは従業員5000人以下の企業を「ミッドマーケット」、500人以下の企業を「SMB」と定義し、パートナーと共に新規顧客の獲得や既存顧客への提案強化を図る。施策の要になるのがAIセールスエンジンで、AIがデータを分析して案件を発掘し、どのパートナーと組むべきかを示すという。
パートナーに対しては、ミッドマーケットとSMBに特化した支援プログラムを用意し、Cisco 360で得られるインセンティブにさらに上乗せするなど支援を行う。吉井執行役員は「製品ポートフォリオが変わってきたことで、中堅・中小企業のお客様に対しても価値を出せる状況になった。(スケールビジネスの領域は)高い成長率となっているため、さらに強化していく」と展望する。
日本ではマネージドサービスへの需要が高いことから、パートナーと連携したマネージドサービスの提供を加速させる。また、25年11月に発表したAI搭載プラットフォーム「Cisco IQ」を用いた運用の効率化などにも注力していくとする。パートナーがAI関連商材の提案ができるよう、トレーニングなどの支援を強化する。
吉井執行役員は「日本は売り上げのほぼ全てがパートナービジネスであり、優れたパートナーエコシステムに支えられている。(パートナーが)Cisco 360をうまく活用できるように一緒に取り組みを進めてビジネスを拡大させたい」と力を込める。