AIが実際のサービスに組み込まれ、業務の中で活用され始めている。日本ディープラーニング協会(JDLA)は、人材育成やガバナンスといった視点から、委員会や資格試験、コンテストなど多様な取り組みを通じてAIの社会実装を目指している。岡田隆太朗・専務理事に取り組みを聞いた。(大向琴音)
ガバナンスについて議論
――JDLAの概要をお願いします。
当団体は、2017年6月にディープラーニングを中心とする技術によって日本の産業競争力の向上を目指す目的で設立しました。設立当時は、ディープラーニング技術などの進歩によって、いわゆる「第3次AIブーム」が始まっていました。これまでの第1次、第2次AIブームにはどちらも冬の時代が訪れてしまいましたが、第3次AIブームではしっかりとしたAIの社会実装を目指すため、業界団体として活動をしてきました。産業活用促進や人材育成、公的機関や産業への提言などを行っています。
いわゆるAIベンダーや有識者のほか、賛助会員として技術をキャッチアップしAI活用を推進する企業など、全体で約150の組織が会員となっています。賛助会員は当初、製造業が多かったのですが、現在ではさまざまな企業が参画しています。どの業界でもAIを道具として使うようになっているということが、会員構成から見てもわかると思います。
――具体的な活動内容について教えてください。
生成AIの活用が広がる中、最近入会した会員から関心が高いのは、ガバナンスです。われわれは、「法と技術の検討委員会」という取り組みを実施しています。日本企業は、グレーゾーンには踏み込みません。AIの活用において、何が白で何が黒なのかといった事柄について、AIに関する法律や技術、ビジネスの専門性を有する委員が議論し、皆さんに安全にAIを活用してもらえることを目指しています。活動の成果はガイドブックなどのかたちで、オープンにしています。
岡田隆太朗・専務理事
AI活用推進の指標として
――人材育成の観点でも、特徴的な取り組みを行っています。
JDLAを設立した年に、AI・ディープラーニングの活用リテラシー習得のための検定試験「G検定」を初めて実施しました。これまで累計で約12万人が合格しており、26年は6回のオンライン試験と、3回の会場での試験を実施します。G検定の「G」は、「General」を表しています。つまりAIは専門家だけが取り組めばいいのではなく、ビジネスパーソン全員がわかっているべきものだということです。既にG検定は、企業の昇格要件になったり、企業のIRの一環として開示されたりなど、AI活用推進に関する指標としても用いられるようになっています。そのほかにも、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかについて認定する「E資格」も実施しています。
――AI人材に関連する部分では、ほかにも高専生向けのイベントも主催されています。
高専生向けに、ものづくりとディープラーニングを活用した事業創出コンテスト「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト(DCON、ディーコン)」を19年から開催しています。かつてはJDLAのみで主催していましたが、現在は他の組織と連携し、DCON実行委員会を設けて実施しています。高専で取り組んでいるものづくりがどれほどの価値につながるのかをわかってもらうという意味で、とても重要な取り組みだと考えています。
イベントを通じて仲間づくり
――今後の取り組みについて教えてください。
直近では、3月19日にAIの社会実装をテーマに、産業・政策・教育・研究の現場が集うイベント「JDLA Connect×CDLE All Hands」を開催します。AIの現状やガバナンスなどに関する基調講演や、人材育成、フィジカルAIに関するセッションなどを用意しています。このように、外部向けのオープンなイベントに今後注力しつつ、仲間を増やしていきたいです。
JDLAとして、やらなければならないことはどんどん増えてきています。それは、AIが既にインフラとなっているからです。これまでわれわれのアプローチは、どちらかというと企業内での活用を中心に捉えることが多かったのですが、いよいよ今年は社会に実装していく年になってくると思います。その検討を進めるにあたって、必要な議論を先んじて行っておくことは重要だと思います。このようなオピニオンを積極的に発信し、必要に応じて活用していただきたいです。
<紹介>
【日本ディープラーニング協会】
2017年6月に設立。ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指すことを目的とする。産業活用促進や人材育成、公的機関や産業への提言、国際連携、社会との対話などの活動を行う。