中国人大学生の就職活動が大変になっている。中でも最難関といわれるのが国家公務員試験である。2025年10月に発表された26年度の国家公務員試験は、採用枠が約3万8000人に対し応募者は372万人、なんと98倍の高さであった。応募者数、平均倍率とも過去最高である。公務員試験には就職浪人も相当な数と言われている。
なぜ、中国の大学生の就職がそんなに大変なのか。まず第1は、習近平国家主席による「住宅は住むためのものであって投機の対象ではない」という中央工作会議での迷言から始まった不動産不況と、それに端を発した長期にわたる中国経済の構造的不況である。
第2は急激な高学歴化である。毎年、1100万人を超える大学生が労働市場に供給されるのだから、受け皿は生半可なことでは追い付かない。しかも、彼らは日本とは比べものにならないほどホワイトカラー志向が強い。
第3は民間企業の採用控えである。これは政府の規制によるAlibaba(アリババ)やTencent(テンセント)などのIT企業の活動萎縮や外国企業の大量の撤退の影響もあるが、それだけでなく多くの企業が先行き不透明感から社員の採用を手控えていることが大きい。在職者もほかに就職先がないため、よほどのことがないと辞めない。給料の支払いが少々遅れても、昇進や昇格がなくても辞めない。
第4は縁故採用である。これだけ就職活動が大変なのに苦労しないで楽に就職先を選べる人々がいる。政府高官などの子弟である。彼らはほとんどが有名大学に入り希望する政府機関や国有企業に優先的に就職することができる。
中国人の元ゼミ生によると、現在の中国人大学生の就職活動のゴールデンコースは、北京大学や清華大学などの有名大学に入り、在学中に一度休学して軍隊を2年間務め、中国共産党に入党する。この涙ぐましい努力をしてゴールデンコースを歩んでも、希望の就職先というプラチナカードが必ずしも手に入るわけではない。
中国の若者の失業率は、国家統計局によると25年4月は15.8%だが、時期は異なるものの23年7月に北京大学の張丹丹副教授(当時)が示した失業率46.5%という数字のほうが妙に説得力を持つ。就職先探しも、結婚も、住宅の購入もしない、最低限の仕事だけして、後は寝て暮らす寝そべり族が急増しているのも分かるような気がする。
アジアビジネス探索者 増田辰弘

増田 辰弘(ますだ たつひろ)
1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。