岐阜市に本社を置くテクノアは中小製造業向けソリューションの展開で存在感を示している。山崎耕治・代表取締役は「価値が届くまで顧客に寄り添い続ける」と話し、自社のコンサルティング人材を活用した伴走支援力を強みに中小製造業の経営課題の解決を目指している。
(取材・文/大畑直悠)
売った後も20回は客先に足を運ぶ
――事業の概要を。
売り上げの約85%は中小製造業向けに展開する生産管理システム「TECHSシリーズ」を中心としたDXソリューションの提供だ。4500社を超える顧客がおり、業界でトップクラスの導入実績がある。医療機関向けの健診支援システムの構成比率は約10%で、800施設ほどに利用されている。残りの5%はカスタムオーダーに対応するECサイト事業者向けデザインシミュレーションシステムとなる。
山崎耕治 代表取締役
最近では、TECHSシリーズだけではなく、生産スケジューラー「Seiryu」やAI画像認識を利用した工場の見える化システム「A-Eyeカメラ」、大量の図面データから類似したものを見つけ出す「AI類似図面検索」といったAIソリューションなど、全般的に好調だ。顧客に共通する課題としては、原価管理や見える化があり、ここをしっかりやらなければ事業ポートフォリオの改善にも踏み出せない。この支援でも強みを発揮している。
――TECHSシリーズの強みを聞く。
売りやすい製品ではなく、顧客に確実に価値を出せる製品として設計されている点が特徴だ。中小製造業で、しかも多品種少量生産の顧客に特化しており、この業態であればほとんどカスタマイズしなくても、ピタッとはまる製品だ。誰に対してでも売れる間口が広いシステムではなくて、狭くてもその領域の顧客に喜ばれるシステムが必要とされる。
また、顧客に対する伴走支援力の高さも特徴で、当社には中小企業診断士やITコーディネーターが多く在籍している。コンサルティング人材を社内で育て上げ、顧客がなりたい姿に導くための支援を展開する体制を構築している。
ソフトウェアメーカーとして少数精鋭で開発し、販売やサポートはパートナーに頼るという方法もあり得るが、人材不足が深刻な中小企業にとっては、製品サポートまで含めて経営改善を一貫して任せられるベンダーが求められている。当社は製品を売った企業に対して、20回は足を運びながら、機能の説明だけではなく運用のあり方について対話を重ねる。これを通して顧客を変革に導いている。
生産管理システム内のデータを活用
――中小製造業が抱える課題は何か。
課題はさまざまではあるが、人材の確保に悩む顧客は多い。長年、現場で采配していたベテランの退職でノウハウが失われるリスクに直面している。なぜその部品構成になっているか、加工手順は何かといった過去の生産の履歴をデータとして残すために当社の製品が必要とされるケースは多い。
顧客のDXの現状としては、「Excel」や自作のシステムを利用している場合があり、ここからのリプレース案件が多い。また、販売管理の部分だけシステムを導入している環境を見直す顧客もいる。追い風となっているのは、団塊の世代の経営者が引退するタイミングにきていることだ。デジタル技術を活用しながら生産性を向上させることを当たり前と思う若い経営者にバトンが引き継がれるタイミングであり、当社が活躍できるチャンスが生まれている。
――今後の製品戦略は。
AIを避けて通ることはできない。生産管理システムにAIを組み込み、顧客がシステムに蓄積したデータを利用できるようにして属人的な判断から脱却できるようにしたい。ただ、間違えてはいけないのは、AIを使うこと自体が目的となってしまうことだ。顧客にとって何が価値になるかという問いを持ち続けて実装に取り組む。
社員の幸せが顧客の幸せをつくる
――組織マネジメントでの注力領域は。
引き続き顧客の経営を支援するための人材の育成に取り組む。当社はPCの使い方の無料講座など、顧客のITリテラシーを上げるための取り組みや、顧客同士の交流会を開いてビジネス機会を創出する支援を展開している。直接的に自社の売り上げには貢献しないが「縁があった企業や人々を幸せにする」という経営理念を体現するためには、ほかのIT企業がやらないことでも当社はやる。理念を社員に浸透させるのは大変なことではあるが、社員が幸せで生き生きと仕事をしていれば、その幸せを顧客にも分け与えられるというのが基本的な考え方だ。社員向けのさまざまな支援策を充実させている。
理念の浸透は経営戦略とも無関係ではない。現在、新規顧客の8~9割はクラウド版を利用している。顧客にとって使い始めやすく、止めるのが簡単なサブスクリプションビジネスを展開する上で、顧客に「ありがとう」と言い続けてもらうための姿勢が重要だ。
これはかつての当社にとっても耳が痛い話ではあるが、システム屋がシステムを売り切った段階で、顧客が価値を享受できたかに関わらず利益を得るビジネスモデルはサステナブルではないし、不自然だった。価値が届くまで顧客に伴走し、顧客と長期的な関係を築くために努力することは、ITベンダーの本来あるべき姿に近づいてきたとも言える。
Company Information
1985年に設立。生産管理や生産スケジューラーなど、製造業向けソリューション群を主力にビジネスを展開し、全国に顧客を持つ。従業員数は355人(2026年4月1日現在)。