福岡市に本社を構えるエコー電子工業は、九州を中心に60年以上にわたって地域に根ざしたビジネスを展開してきた。ビジネスが堅調に成長する中、全国での事業拡大にも取り組んでおり、2030年に売上高100億円企業を目標に掲げている。組織の再編を進める中、小林啓太・代表取締役は「長年培ってきたノウハウを生かした総合力を発揮する」と意気込んでいる。
(取材・文/大畑直悠)
人事・給与システムが好調
――事業の概要は。
三つの柱があり、基幹システムやクラウド、ネットワーク、セキュリティーなどを組み合わせてDXを支援するソリューション事業と、公共自治体向けに情報通信領域のソリューションを提供する事業、情報機器を適正に処理する環境事業を展開している。環境事業を通じて、情報機器の導入から廃棄まで一貫して顧客をサポートできる点が特徴だ。
当社の強みの一つは独立系SIerとして長年にわたって地域に密着して事業展開してきたこと。ありがたいことに、九州で新しいソリューションを展開したいベンダーにお声がけしてもらえる立ち位置を築くことができた。
――ビジネスの近況は。
順調に推移しており、グループの売上高は25年3月期が約70億8000万円で、26年3月期はさらに増加する見込みだ。自治体向け、民間向けともに偏りなく成長している。環境関連のビジネスに関しても回収エリアを拡大している。また、中古PCの販売も手掛けており、メモリーなどの部材価格や新品PCの値上がりを背景に、需要が高まっている。
商材面では人事・給与システムが好調だ。人的資本経営への対応を進める企業が増加する中、システムの見直しも続いており、給与計算や勤怠管理だけでなく、人材データを活用するための仕組みへの関心が高い。
顧客への伴走支援で強みを発揮
――顧客が抱える課題をどう分析しているか。
人材不足は九州でも深刻だ。特にIT人材不足がネックとなってデジタルシフトが難しい状況がある。
ITシステムの担当者が世代交代するタイミングにある顧客が多い点も課題で、パッケージ製品への移行で業務の標準化に関心を示す顧客が増えている印象だ。当社に対しては、独立系SIerとして、さまざまなソリューションを組み合わせて課題解決をトータルで支援できる点が期待されている。加えて、パッケージ製品の導入に合わせた業務プロセスの見直しも必要になるため、これまで培ってきた知見を生かして対応している。
小林啓太 代表取締役
――生成AIの存在感が高まっている。
システム開発においては、プログラミングのような業務は今後、代替されるだろう。一方で営業のような顧客に伴走し、課題を発見する領域に関しては完全な置き換えはできない。この領域の人材確保を今後も進めていく必要があると考えている。
――今後の注力方針は。
24年にエフサステクノロジーズから事業譲渡を受けた働き方を可視化するソリューション「TIME CREATOR」の販売に力を入れる。労働基準法改正や時間外労働規制の強化により、勤怠管理は単なる打刻管理から経営リスクを防ぐ仕組みへと役割が増している。
TIME CREATORは、既存の勤怠システムとも連携しながら終業時刻から翌日の始業時刻の間に一定時間以上の休息を確保する「勤務間インターバル」や連続勤務の自動チェックに加え、残業時間のリアルタイム管理、不正打刻の防止が可能だ。
データドリブン経営に向けた伴走支援サービスも強化する。「データを活用したいが、何から始めればよいか分からない」との声は多い。業務データの統合・可視化だけではなく、目的整理から戦略策定、ダッシュボード設計、運用定着まで一貫して支援することで、単なるBIツール導入にとどまらない、顧客自身で継続的にデータを活用して成果を創出できる体制づくりを後押しする。
全国への事業拡大に注力
――中長期的な目標は。
30年までに売上高100億円企業を目指している。実現に向けて24年には組織を事業部制に変更した。以前は拠点単位での組織づくりが足かせになったこともあった。具体的には人が余っている、逆に人が足りない拠点が存在し、拠点によって大型案件に新人が関わりづらいといった課題もあった。これらを改善し、各事業部が拠点の枠を超えて顧客を支援できるようになった。
全国への事業拡大にも注力している。TIME CREATORはすでに大手企業を中心に全国に顧客がいる。これは当社がこれまでリーチできていなかった顧客層でもあるため、付加価値の提案をしながら、さらに事業を拡大させていきたい。
――今後の意気込みを。
走り続けることを大事にしたい。一過性の瞬発力ではなく持続的に成長できる会社をつくっていく。23年に「ICTで共に明日のあたりまえを作る」とのビジョンを策定し、現在はこれを社員に浸透させるフェーズだ。さまざまな関係者との共創を通じて、固定観念にとらわれない価値創造を目指す。IT市場自体が成長段階ではあるが、そこにあぐらをかくことなく、コツコツ、きっちりとビジネスを伸ばしたい。
Company Information
1963年に創業。イ・アエラグループの中核企業として電子・情報通信機器の販売やITシステムの販売を手掛ける。福岡県福岡市に本社、長崎県佐世保市に本店、東京都大田区に支店を置く。