アクロニス・ジャパンは、マネージドサービスプロバイダー(MSP)との協業により、パートナービジネスの強化を図っている。一つの製品でバックアップとセキュリティーの双方の機能を提供することで、運用負荷を軽減できる点や、充実した支援体制により、MSPパートナーの拡充が進んでいる。2026年度に開始されるサプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)への取り組みにも注力しており、パートナーと共にターゲット層となる中堅・中小企業の顧客獲得を加速させる。(岩田晃久)
バックアップとセキュリティーを一つの製品で
同社は、EDR(Endpoint Detection and Response)やメールセキュリティー、データ保護といったセキュリティー機能と、かねて提供してきたバックアップ機能の両方を包括的に備えるプラットフォーム製品「Acronis Cyber Protect」を主力にビジネスを展開している。NIST(米国国立標準技術研究所)のガイドライン「サイバーセキュリティフレームワーク」で定義されている機能を搭載するのが特徴となる。加えて、情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」で示されている「情報セキュリティ6か条」に対応できるという。
同製品について、川崎哲郎社長は「(さまざまな機能を)一つのソフトウェアで提供するという取り組みを長年しているのはユニークな部分だ。価格においても圧倒的な支持を得ている」と強調する。
同社は中堅・中小企業をターゲットにしていることから、パートナーと共に情報セキュリティ6か条を用いたセキュリティー対策の重要性などを提案しているという。
パートナーは柔軟にサービスを設計
現在同社では、Acronis Cyber Protectの強みを生かして、MSP経由での販売を伸ばす戦略を推進している。サービスプロバイダー向けの「Acronis Cyber Protect Cloud」を用意し、MSPは、Acronis Cyber Protectの複数の機能の中から、セキュリティーとバックアップの両方、セキュリティーのみなど、柔軟に機能を選択してサービスを設計できる。提供する機能の追加ができるため、アップセル・クロスセルにも適しているとする。セミOEMのため、MSPは自社サービスのかたちでユーザー企業に提案することが可能だ。
SPクラウド事業本部パートナー開発統括部の荒巻大地・統括部長は「ITやセキュリティーの人材が不足しているため、マネージドサービスの需要は拡大している」と分析する。
川崎哲郎社長(右)と荒巻大地・統括部長
MSPパートナーは490社(6月9日時点)で、今後も増加していく見通しだ。従来、他社のオンプレミス製品を扱っていたパートナーが、“モノ売り”から“コト売り”へのビジネス変革を目的に、Acronis Cyber Protect Cloudを活用して初めてマネージドサービスを提供するといったケースも出てきているという。
パートナーがマネージドサービスを推進できるよう、充実した支援体制を用意する。「ローカライズにはかなりの金額の投資している」(川崎社長)とし、40以上の日本語化されたトレーニングコンテンツを用意。今後は、MSPモデルをさらに国内市場に浸透させていくことを目的としたトレーニングコンテンツをつくる予定だとする。そのほかにも、サービス設計やイベント共催などを行っている。今後は、ディストリビューターと連携したワークショップの開催といった施策を予定する。
自社でセキュリティー運用サービスを提供できないパートナーに対しても、MDR(Managed Detection and Response)サービスを用意することで、ユーザー企業に対して運用までをセットで提供できるようにしている。
MSPを経由したビジネスのARR(年間経常収益)は、近年、前年比40%増以上の成長を続けており、パートナーの拡充や支援体制の強化を図り、さらなる成長につなげていく。
SCS評価制度への取り組み強化
2026年度中にはSCS評価制度が開始される。同制度に対応するために、ユーザー企業は複数の製品を導入し、運用していく必要がある。川崎社長は「当社の場合、一つの製品に機能が集約されているため、運用が容易になる。そうした面で役に立てるはずだ」と述べる。
荒巻統括部長は「SCS評価制度をビジネスチャンスと捉えるパートナーは多い。その中で、『アクロニスの製品を中心にすることで、最短でSCS評価制度に対応できると感じている』といったポジティブな声をいただいている」と語る。SCS評価制度の開始に向けて、特設HPやセミナーを通じた情報発信に注力していくほか、セールストレーニングの提供などを通じてパートナーをサポートしていく姿勢だ。