全国で花火大会のシーズンを迎えている。私が住む自治体でも毎年この時期に盛大な大会を開催している。普段は遠くに上がる花火を自宅から少し眺めるくらいで済ませていたが、一度はしっかり鑑賞してみるかと、有料のチケットを購入して打ち上げ場所近くへと足を運んだ。
打ち上げ花火は、計算によって美を表現する芸術だ。花火玉は上空へ打ち上げられた後、内部の「割薬」と呼ばれる火薬に火がつくことで、色とりどりに発光する「星」を球状に飛ばし、大きな円形の光を描く。玉が上昇している途中に星が飛んでしまうと、きれいな球状にはならない。このため、上昇速度がゼロになった瞬間に割薬が炸裂するのが理想的だ。打ち上げから割薬の点火までの時間は主に導火線の長さで決まるため、どの高さへ上げる花火かによって長さを微妙に変えている。
玉が開き、発光が始まってから消えるまでの間に、光の色が変わる花火もある。花火の色は金属化合物の炎色反応を利用したものなので、色の変わる花火は複数の異なる材料を星に練り込んである。ある一つの材料を使って小さな丸い星をつくり、それを乾燥させた後、別の材料を周囲に付けて星を大きくする。色を一つ増やすたびにこの工程を重ねていくので時間がかかる。
花火玉の製造が今も基本的に手作業で行われる一方、打ち上げは自動化が進んでいる。花火師というと、打ち上げ用の筒のすぐそばで玉と種火を投げ込んでいるイメージがあるが、現代の打ち上げ花火は多くが遠隔からの電気点火だ。私は今回、有料席ということで打ち上げ場所を直接視認できる場所で花火を楽しむことができたが、打ち上げ場所は完全に無人だった。何十発もの花火を完全に同期させるといった芸当は、機械でないと難しい。
花火が江戸時代以来の職人芸であることは変わりないが、あらためてきちんと鑑賞してみると、感覚を頼りにした技能の部分以上に、今では緻密な事前設計と、時間軸を伴う演出の追求に重点が置かれ、言わばプログラミング的な要素が多くの比率を占めていることがよくわかった。花火の目的は昔も今も人を感動させることだ。ただ、伝統を背負う職人であっても、その実現方法は時代とともに変わる。仕事のやり方を変えることもまた、伝統の一部なのかもしれない。
週刊BCN 編集長 日高 彰

日高 彰(ひだか あきら)
1979年生まれ。愛知県名古屋市出身。PC情報誌のWebサイトで編集者を務めた後、独立しフリーランス記者となり、IT、エレクトロニクス、通信などの領域で取材・執筆活動を行う。2015年にBCNへ入社し、「週刊BCN」記者、リテールメディア(現「BCN+R」)記者を務める。本紙副編集長を経て、25年1月から現職。