著作権や特許権、商標権などは、まとめて知的財産権と呼ばれる。著作権は文化の発展への寄与を目的とし、特許権や商標権は、産業の発展への寄与が目的だ。文化と産業という違いがあるが、現代の文明社会においてベースにあるのは文化だ。「文化」とは生活の総体で「文明」は文字をもち、交通網が発達し都市化が進み国家的政治体制のもとで、経済状態・技術水準などが高度化した「文化」を指す。文化のない社会で産業だけが発展することはありえない。
だから私は、学校教育でも企業教育でも著作権の学習があって、その上で特許権を学ぶべきだと考えている。そもそも発明の出願はプロに任せればいいが、子どもたちは作文をつづり、絵を描き、プログラムもつくる。それらは創作表現した時点で著作物なのだ。著作権のほうが学ぶ優先度は高い。
知的財産権のうち、特許権などは産業財産権と呼ばれるが、過去には工業所有権と言われていた。その名前を冠した工業所有権情報・研修館(INPIT)という団体があり、知的財産権の普及活動を行っている。ただ、著作権領域へのアプローチが難しいと聞き、ソフトウェアという著作権・産業財産権の塊を保護し、その普及活動をしているコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が引き受けることになった。8月末に「知財力開発支援事業」のもと、全国高校・高専63校の教員に80分間の基調講演を行った。
商工農といった実業系高校の教員が、知的財産権やそのサ-ビスについて理解してもらう必要性は普通高校より高いように感じる。今回は、知的財産権の中で著作権の重要性を理解してくれていたからこそ講演が実現。では、企業、高等教育などではどうだろう。
政府は、2023年時点で約5.8兆円だったエンタメ、コンテンツ産業の海外売上高を、33年までに20兆円に引き上げるという。日本には優れたコンテンツがあり海外でも人気だが、このコンテンツを生かすためには、知的財産権、とりわけ著作権に精通し、創作・創造する人材がもっと大勢必要ではないだろうか。
ACCSでは、設立以来、学校や企業に向けて、著作権教育のための講師派遣を行っている。20兆円という目標を目指すなら、政府を挙げて、もっと大規模に、より深い著作権教育を実施しなければならない。
一般社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事 久保田 裕

久保田 裕(くぼた ゆたか)
1956年生まれ。山口大学特命教授。公益社団法人著作権情報センター理事、公益社団法人日本文藝家協会知的財産権委員会委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振るスマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。